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フィラグリン [filaggrin]

表皮の顆粒細胞で産生される塩基性タンパク質の一種.分子量は約40 kDa.ヒスチジンリッチプロテインともよばれる.フィラグリンは前駆体であるプロフィラグリンとして生合成される.プロフィラグリンは、リンカーペプチドを介してフィラグリンが10〜12個連結した構造をもつ分子量約400 kDaの巨大なタンパク質で、発現するとただちにリン酸化を受けて顆粒細胞内のケラトヒアリン顆粒を形成する.表皮のターンオーバーに従って、顆粒細胞が角層細胞に移行すると、リン酸化プロフィラグリンは脱リン酸化および限定加水分解を受けて、フィラグリンにまで分解される.角層細胞内で進行するケラチン線維の線維形成反応を促進する働きを有し、この働きに基づいてfilament aggregating protein(線維を凝集させるタンパク質という意)に由来してfilaggrinと命名された.フィラグリンは角層細胞が下層から上層へと移行する過程で、さらにプロテアーゼの作用でアミノ酸にまで分解される.このように生成した角層中の遊離アミノ酸は、天然保湿因子(NMF)として機能する.角層中の遊離アミノ酸の組成がフィラグリンを構成するアミノ酸の組成に近似することから、NMFとしての角層中アミノ酸の供給源がフィラグリンであると考えられている.また、フィラグリンの一部は、コーニファイドエンベロープに組み込まれるとの報告や、プロフィラグリンの断片ペプチドがケラチノサイト(表皮角化細胞)のアポトーシスに関与するとの報告もあり、皮膚におけるフィラグリンの機能は多岐にわたる. 遺伝性の角化異常疾患である尋常性魚鱗癬(じんじょうせいぎょりんせん)ではフィラグリンの発現が顕著に低下しており、その結果、ケラトヒアリン顆粒の減少、角層中アミノ酸の低下、角層水分量の低下やスケーリングなどの異常を示す.(平尾哲二)

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