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マッサージ [massage]

手や指、場合によっては器具などを使用して顔やからだをなでる、さする、もむなどの刺激を与えて機能を回復させる刺激療法のこと.直接的には血管やリンパなどの循環系に、間接的には神経を介した反射機転などによって筋肉や神経系そのものに影響を与え、その結果として新陳代謝を促し、皮膚を美しく保つといったさまざまな効果が得られるものである.マッサージはもっとも古くから行われている自然療法といえ、打撲や外傷などの痛みを本能的に手を触れて和らげていた行為がより効果的な方法に発展してきたものであると考えられる.分類は種々あるが、美容マッサージとよばれる美肌、痩身などを目的とした、皮膚に直接オイルやクリームなどの滑剤を用いて施術する方法は、西欧を中心に広がり、明治時代に日本に伝来したとされている.
目的、効果
マッサージにはおもに顔面を中心的にケアするフェイシャルマッサージと、身体を中心的にケアするボディマッサージとに大別される.フェイシャルマッサージは施術によって角層の剥離サイクルを規則化することで、正常な美しく、きめの細かい肌を維持したり、血行を促進させることで新陳代謝を活発にし、小じわたるみなどの皮膚の衰えを防いだりという目的でおもに活用されている.一方、ボディマッサージは血行を促進して新陳代謝を活発化するだけでなく、施術によって皮膚温を上昇させることで発汗を促したり、脂肪を減らしたり、つきにくくしたりする、いわゆるスリミング(痩身)を目的に用いられることも多い.
手技
マッサージの基本的な技法としては軽擦法(けいさつほう)、揉捏法(じゅうねつほう)、強擦法、圧迫法、叩打法(こうだほう)、振せん法などがあり、各法によって施術の強弱がある.もっとも一般的なものは手掌や指腹でさする軽擦法であるが、ボディマッサージなどでは手でつかみおさえ、こねたり、もんだりする揉捏法が用いられる場合もある.ただし、誤った技法は肌に過度の刺激を与え、皮膚を傷める場合があるので、正しい施術方法や目的にあった品質のよいマッサージクリームを選択することが必要不可欠である.エステティックマッサージフランスで生まれ、欧米各国に伝わり、日本での始まりは明治時代に米国より伝えられたフェイシャルマッサージといわれている.その後、按摩や指圧などの東洋医学をもとにしたマッサージ技術を取り入れながら、日本独自のエステティックマッサージのベースをつくった.エステティックマッサージを体験した人の感想には、“肌がしっとりあか抜けた感じになった”“とても気持ちがよく、ゆったりした気分になった”といったものがある.この点からもわかるようにエステティックマッサージはスキンケアだけでなく心身のリラクゼーションも含んだ肌、心身のトータルケアを目的とした美容法としてとらえられている.エステティックマッサージの一般的な施術の流れを図1に示す.まず、プレカウンセリングで顧客の肌悩み、心やからだの状態、生活習慣などを問診し、顧客の現在の状態にあった施術方法を決定する.その後、実際に手入れを開始.プレマッサージでは手足を軽くもみほぐすことによって緊張や不安を取り除く.クレンジングでは顔面にスチームを当てながら、油性、水性の洗顔料を用いブラシや吸引によって肌の清浄を行う.そしてマッサージでは顔の肌を軽擦、揉捏、圧迫することにより、血行を促進し新陳代謝を高める.パックは顧客の肌悩みに応じて選択されるが、マッサージ後の肌の鎮静と密閉による有効成分の浸透促進を目的とする.これら一連の施術の中で顧客は心身ともに心地よく弛緩した、いわゆるリラクセーション状態を体験するのである.アフターマッサージはこのような状態から心地よく目覚めさせるべく覚醒効果のある香りや冷刺激、つぼ押しを施す.実際の施術はここで終了する.アフターカウンセリングではメークアップを施しながら、化粧のりの向上などによりエステティックマッサージの肌への効果を実感してもらう.心地よくなった、美しくなったという実感を美容や健康、日常生活に関するアドバイスにつなげて終了となる.エステティックマッサージの生理的、心理的効果については脳波や自律神経系免疫系内分泌系というホメオスタシス(恒常性維持機能)にかかわる生理的指標、感情状態、意識水準といった心理指標を用いて評価が行われている.生理的、心理的効果を測定する目的で、エステティックマッサージ施術前後の自律神経系の指標である心拍と感情状態の変化を8名の被験者を用いて調べた結果を図2、図3に示す.図2は4名の被験者の施術各ステップにおける心拍の平均値を示したものである.仰臥位(あお向け)の安静閉眼状態である開始時から、ステップを追うごとに心拍数が減少し、マッサージあたりで最低値を示し、その後上昇しているのがわかる.心拍数の減少は副交換神経活動の亢進を示し、マッサージを頂点としたリラクセーション状態が実現されていると推測される.このような施術の前後における感情状態の変化を多面的感情状態尺度によって測定した結果を図3に示した、肯定的な感情である非活動的快(和らいだ、ゆったりとしたなど)、活動的快(爽快な、活気のあるなど)が増加し、否定的感情である抑うつ不安(くよくよした、気がかりななど)、倦怠(だるい、不機嫌ななど)が減少していることがわかる.エステティックマッサージによって気分が落ち着くとともに爽快感を感じ、心の気がかりやからだのだるさがとれたということである.(奥田剛弘、樋口清信)

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