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汗腺 [sweat gland]

汗を分泌する器官.エクリン汗腺とアポクリン汗腺があり、いずれも管状腺で、分泌部と導管部に分かれる.分泌部はくねくねと曲がったコイル状の管で(図)、導管部は真皮深層から皮下組織にかけて脂肪層に囲まれて存在する.(1)エクリン汗腺[eccrine sweat gland]ほぼ全身の皮膚に分布するが、口唇、亀頭、包皮内板、陰核、小陰唇には分布しない.分布密度は130〜340個/cm2で、日本人では約230万個あり、1日に10 Lもの汗を分泌する.分泌部(汗腺)と導管部(汗管)からなるが、後者はさらに分泌部に近い部分から、曲導管、直導管(以上、真皮内導管)、および表皮内導管に分かれる.分泌部は多数の血管と神経終末に取り巻かれている.分泌細胞としては、明調細胞または漿液細胞と、暗調細胞または粘液細胞の2種類がある.前者は形態的な観察から、後者は機能的な面から命名されたものである.これらの腺細胞を取り巻く形で筋上皮細胞が存在する.明調細胞は腺腔よりも基底側に位置し、グリコーゲンに富む小顆粒を有する.暗調細胞は多数の分泌顆粒を有し、ムコ多糖類を含む.筋上皮細胞は機能的にも平滑筋と同じで、その収縮により腺腔に分泌された内容物を押し出すことにより汗を分泌する.①曲導管:2層の細胞よりなり、内側を管腔細胞といい微小絨毛をもつ.外側は外周細胞という.細胞から分泌された前駆汗はここで能動的にNa+とCl−が再吸収され、99%が水の低張な最終汗となる.②直導管:垂直に走り表皮に達する2〜3層の細胞よりなる.ケラチン線維*が増加し、上部では管腔側の細胞は角化傾向を示す.③表皮内汗管:1層の管腔細胞と2〜3層の外周細胞よりなる.管腔細胞はケラチノサイト(表皮角化細胞)より早期に角化し、汗管壁を形成し、外力で閉塞しない強度を与える.(2)アポクリン汗腺[apocrine sweatgland]腋窩(えきか)、乳輪、外陰、会陰、肛門周囲に存在する.体表面に開口することはなく、毛包上部に開口する.毛や脂腺と同じく毛包原基由来である.分泌部と導管部に分かれるが、導管部はさらに毛包内汗管と真皮内汗管とに分かれる.毛包内汗管は、直線的に脂腺開口部の上方で毛穴(孔)部に開口するが、まれに直接表皮に開口するものもある.分泌細胞は2種類の顆粒(暗調顆粒、明調顆粒)をもつ.分泌機序は、断頭分泌またはアポクリン分泌といわれ、顆粒とともに細胞の内容物も同時に放出する様式が考えられているが、エクリン汗腺と同様との説もある.アポクリン汗は、中性脂肪、脂肪酸、コレステロールなどの脂質のほか、鉄、色素、細胞破壊成分を含み、導管を経て毛漏斗中に押し出される.導管部は、表皮内ではらせんを描くことなく、まっすぐに伸びている.思春期とともに急激に発達し、分泌を開始する.その臭いは性的刺激となる.進化的には、ほかの哺乳類に見られる芳香腺の退化したものであるが、ウマ、イヌ、ブタではアポクリン発汗は体温調節にも関係していると考えられている.ヒトのアポクリン汗は弱アルカリ性で、皮膚に付着する菌が有機成分を臭気成分に変えるため臭いを発する.(日比野利彦)

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