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スキンケア [skin care]

肌を手入れする行為、行動を総じていう.皮膚が本来もつホメオスタシスを引き出し、補い、高めながら、美しく健康で健やかな皮膚に導くことを目的としている.スキンケアの目的は大きく分けて四つに分けられる.
(1)悪影響を取り除く
皮膚表面には、皮脂、老廃物やメークアップ料があり、さらに塵(ちり)や埃(ほこり)、細菌、大気汚染による化学物質などが付着する.時間の経過や紫外線の影響により、これらが酸化劣化を受けるなどして、皮膚に刺激やダメージを与え、これらの蓄積が老化の一因になったりする.このような皮膚表面の汚れを、洗顔、ふきとり化粧水、クレンジング類などを用いて取り除くことにより、肌表面を清潔にすることは、健やかな肌の維持、ならびにホメオスタシスの維持に重要な手入れとなる.最近では、毛穴に詰まった汚れや角栓を溶かし出す、古くなった余分な角層を積極的に取り除くなど、透明でなめらかな肌を維持するスキンケアも一般化されている.
(2)バランスを整える
きめが整い、うるおいに満ち、透明感がある肌を維持するためには、肌の表層にある角層や表皮が正常に機能することが重要である.皮膚は乾燥、紫外線、酸化あるいは精神的ストレスや内分泌などの内的影響を受けると、皮膚表面の水分、油分、天然保湿因子(NMF)のモイスチャーバランスが乱れる、皮膚の生理機能に必要な酵素の活性が低下あるいは亢進する、ミネラルのバランスが崩れる、皮膚の緩衝能が低下してpHが中性側に変化するなど、さまざまなバランスが崩れて皮膚表層の機能が低下する.このような皮膚表層の機能低下に対して、化粧水や乳液のようなスキンケア化粧品は、適正な成分を肌に十分に補い、モイスチャーバランスをはじめとする肌表層の各種バランスを整え、肌が本来の力を発揮しやすい環境に戻す作用がある.
(3)活力を与える
皮膚の深部にあたる真皮では、外部環境の紫外線や酸化の影響によって、真皮を構築しているコラーゲン線維エラスチン線維ヒアルロン酸などの細胞外マトリックス成分が変性、劣化したり、エイジング(→加齢)によってこれらの産生そのものが低下して、皮膚のはりや弾力が低下する.また、精神的ストレスや内分泌などの内的影響によっても、血流や細胞機能が低下し、また皮膚の活力やホメオスタシスが低下して、しわ、たるみ、しみなどの老徴が認められるようになる.クリームやマッサージ、パック(マスク)などのスキンケアは、停滞した血流を正常化して、皮膚全体の新陳代謝を促進したり、細胞機能を活性化して重要な成分の産生を高めたり、ダメージを受けた部分の修復力を高めたりすることで、皮膚に活力を与え、いきいきとした肌、ふっくらとしたうるおいとはりに満ちた肌を提供する.このほかにも、しわ、たるみという加齢に伴う肌悩みや、若年層に多く見られるにきびや肌荒れ、むくみやくまなどの肌悩みに対しても、スキンケアの有用性が確認されている.近年では、アロマコロジー技術を活用し、リラックス効果がある香料をスキンケアに用いることで、精神的ストレスをおさえ、ストレスに起因するにきび、皮脂過剰、肌荒れという肌症状を改善する効果を高めることができるようになった.
(4)環境から守る
近年、大気汚染の拡大により過酸化物などの化学物質が肌に刺激を与えたり、オゾン層の破壊による紫外線量増加によって紫外線による皮膚への障害が年々増大している.紫外線は、皮膚にある免疫担当細胞のランゲルハンス細胞にダメージを与えて、生体の免疫力を低下させたり、皮膚のメラニン色素の生成を促してしみの形成を促進したり、コラーゲン線維やエラスチン線維のような細胞外マトリックスを変性してしわやたるみの形成を促進する.また、細胞のDNAに障害を与え、修復しきれなかった損傷の蓄積が老人性色素斑などのしみ、さらには皮膚がんを引き起こす.最近では、レジャーや真夏の強い日差しのみならず、生活紫外線といわれるレベルの紫外線量でも、表皮細胞の機能や皮膚中の酵素活性に影響を及ぼし、その蓄積がしわやたるみの光老化の要因になることがわかってきている.環境が悪化しつづける昨今は、レジャー時のみならず、日常の生活紫外線レベルであっても、皮膚を紫外線から防御することが美容と健康の維持に重要である.そのために、紫外線をカットする効果をもつUVケア化粧品、日焼け止め化粧品などのSPF表示がついたものが有用である.これらの化粧品は、紫外線が皮膚の中に届くのを防ぎ、細胞やそのDNAの障害を未然に防止したり、皮膚表面の酸化劣化を防ぎ、紫外線によって起こるさまざまな機能低下を未然に防止する効果をもつ.日中の洗濯や散歩レベルでの紫外線防御、真夏の海辺やスキー、ゴルフ時のように強い日差しからの防御、激しいスポーツ時のように汗や海水で落ちない耐水性が必要な場合など、肌質や用途に応じたSPF数値と特徴をもったUVケア化粧品を選択して使用することが望ましい.(高須恵美子)

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