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第37回「SCCJセミナー」明日から使える分散技術—その理論と応用—

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  • フリーディスカッションの模様②
  • フリーディスカッションの模様③
第37回SCCJセミナー
「明日から使える分散技術-その理論と応用-」

期日:2011年2月25日(金)
会場:大阪国際交流センター

今回は214名の方にご参加頂きました。
SCCJセミナー委員会よりレポートが届きましたので、掲載致します。また、こちらのレポートはSCCJ Journal Vol.45-1(3月末発行号)へ掲載予定です。




1.【分散と分散系のレオロジーの基礎】大坪 泰文 先生/千葉大学大学院工学研究科

分散系製品の性能は、そのレオロジー特性と深く関係しており、分散系のレオロジー挙動を把握し、制御することは、工業的にも非常に重要であると言える。液体中に分散した粒子は、粒子間に働く引力により凝集体を形成するが、凝集が起こると、系のレオロジー挙動は複雑に変化する。これは、せん断条件により、凝集体の形成と破壊が起こるためである。
本講演では、分散凝集系のレオロジー挙動の基礎や、レオロジーコントロールを実現する技術に関してお話頂いた。凝集分散系は、一般的にせん断速度とともに粘度が減少する擬塑性流動を示す。しかし、高分子や界面活性剤を導入した系では、その結合の柔軟性や吸着形態などから、特異的なレオロジー挙動を発現するようになる。今後のレオロジー挙動の制御と、工業技術としての応用の可能性を示唆される機構を説明頂いた講演であった。
(森田寛三/牛乳石鹸共進社(株))
 

2.【顔料分散に及ぼす顔料粉体の表面処理の効果と応用】田中 巧 氏/大東化成工業(株)

メイクアップ化粧料等の配合で、親水性の高い無機酸化物粉体を油剤へ分散させるには、粉体の表面処理が不可欠である。本公演では、無機酸化物粉体の一般特性、表面処理の種類 及び 最新の表面処理でのユニークな特性について講演いただいた。
無機酸化物粉体の表面処理は、①親水性表面を親油性に変化、②酸,アルカリによる表面活性 及び 分解活性の抑制、③油剤の吸油量を減少するという利点がある。
新規開発された表面被覆顔料中には、ユニークな特性を示すものがあり、水への分散性に富むもの、保湿効果を示すもの、界面活性作用を発揮し、一定割合の水と油剤においてO/W型らしきのエマルション分散体を形成するもの等が挙げられた。また、天然由来原料の要請が高まり、クリーム等に応用できるセラミド型バイオサーファクタントにおける表面被覆顔料が開発される等、最新の表面処理技術を踏まえた講演であった。
(森田寛三/牛乳石鹸共進社(株))
 

3.【紫外線散乱剤分散系の評価方法】那須 昭夫 氏/(株)資生堂

紫外線散乱剤に利用される無機系紫外線防御粉体は、紫外線防御効果が高く安全性も高い点から化粧品として広く使われている。しかしながら、酸化チタンや酸化亜鉛を適切な分散条件で分散しないと、有効な紫外線防御効果が得られないことや、肌上での不自然な塗布状態を示したり安定性に問題が生じる。適切な分散特性を評価する指針として、レオロジー特性値による定量的な解析が求められている。本講演では、紫外線散乱剤の分散評価を例にして、分散系の評価手法について詳細に紹介された。微粒子酸化チタンを油分に分散させる場合に、分散剤として用いるポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサンのうち、ペンダント型と(AB)n型の2種の構造異性体を例に挙げ、その構造の違いが分散特性にもたらす影響について講演された。各サスペンションの流動特性は、分散剤の構造の差異によって生じる分散粉体との吸着挙動に影響を受け、保管状態の違いによって生じるサスペンションの粘弾性の差などに反映されることが示された。これまで研究者の経験や感性によって判断されていた紫外線散乱剤の分散特性の評価に、レオロジー測定を駆使した定量的な評価手法を導入することによって、紫外線散乱剤の凝集性を制御し、良質な紫外線防御効果を得られた。紫外線散乱剤のような粉体を扱う製剤研究者にとって示唆の富む講演であった。
(栗山健一/(株)マンダム)
 

4.【「きれい」をつくる分散技術 〜メイクアップ化粧品における着色顔料分散について〜】
永井 智雄 氏/(株)カネボウ化粧品 メイクアップ研究所

メイクアップ化粧品において、着色顔料を均一分散させることは品質上大変重要である。着色顔料の分散性が改良されると、製品製造段階での色別れ、色むらや色調再現性が改善され生産性が上がる。さらに製品としての色調が鮮明化し着色力も上がる。当然、着色顔料の分散性が悪い場合は、商品の安定性を損なう。講演では、着色顔料の分散性が商品の品質に及ぼす影響を、粉体ベース、油系ベースおよび水系ベースへの分散を例に挙げて解説された。パウダーファンデーションなどの粉体ベースの商品では、機械的分散力で分散させるため着色顔料を完全に均一化して分散させることは困難であるが、分散が不十分な場合は、商品の色調に影響を与えるだけでなく、外観色と塗布面での色相差を大きくする。リキッドファンデーションなどの油系ベースへの着色顔料の分散においても、分散性が商品に与える影響は大きく、顔料がより細かく分散されると光の反射面積が増加し濃く鮮明に色調を認識することができる。粒状ベンガラを油剤に分散させる際に、ベンガラ表面の疎水性をあげる(ASI処理)ことで無極性オイルに対して分散性を高めることができ、高発色な口紅の実現ができた。これらの例から、メイクアップ化粧品において、着色顔料をより均一に分散させる工夫が大切であることを講演された。
(栗山健一/(株)マンダム)
 

5.【肌を育むための分散技術 〜ベシクルの分散について〜】紺野 義一 氏/(株)コーセー研究所

ベシクルとは、両親媒性物質の自己組織体であるラメラ液晶(ゲル)を同心円状の微粒子として水に分散したものであり、角層に対する高い浸透貯留性や薬剤の皮膚親和性、皮膚の保湿性などの有用性を示すという報告がある。本講演では、代表的なベシクルであるリポソームに関して、その安定化向上の手法や有用性について述べられた。一般的なリポソームの安定化の手法として、物理的手法による微粒子化や、粒子の表面電化に起因する静電的反発力を高めることなどが挙げられた。界面活性剤を利用したベシクル形成の例として、ノニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤の例が解説された。ノニオン界面活性剤は、電解質共存下や液性の違いによる影響を比較的受けないため、リン脂質に添加することで安定化させることができる。さらにベシクルの有用性の例として、有効性成分内包による皮膚角層貯留性の向上や、毛髪への浸透性評価結果に関して例示された。ベシクルは、化粧品製剤にとって非常に有用であるが長期安定化には課題があると指摘されてきた。製剤研究者にとって本講演で示されたベシクル分散に関する具体的な手法例は参考になったと考える。
(栗山健一/(株)マンダム)
 

6.【顔料分散における湿式微粉砕技術】大江田 浩光 氏/(株)井上製作所

鮮明な色を実現するためには、顔料本来が持っている性能を十分に引き出すことが不可欠である。そのためには、顔料粒子を出来るだけ微細に、かつ安定に分散する必要があり、そのためには分散方法、分散機械の選定などが重要となってくる。
本講演では、口紅に古くから使用されている三本ロールミルの分散メカニズム、分散機構やUVケア化粧品によく使用されるビーズミルの詳細な解説があった。三本ロールミルは剪断力、圧縮力やキャビテーションなど、様々な分散作用の組み合わせで効果を上げていることやUVケア化粧品によく使用されるビーズミルは、回転体の種類やビーズの種類、大きさを目的とする分散物によって適切に選択する必要があることが解説された。分散機器の詳細な解説で改めて基礎を知ることが出来た。また、最近の分散機についても紹介され、今後の分散技術に役立つ講演であった。
(前野広史)
 

7.【自動車用塗料における分散技術】原川 浩美 氏/関西ペイント(株)

化粧品技術にも大いに役立てることが可能な塗料技術を自動車用塗料の観点から、溶剤系塗料と水系塗料について解説された。
溶剤系塗料は、「顔料」、「高分子」、「溶剤」相互の関係を十分考慮することが必要であり、高分子の酸・塩基の作用も働かせる必要性がある。これらをコントロールすることで良好な塗料を得ることが出来る。また、何層にも塗られる自動車塗装において、効率アップ、環境への配慮から水系塗料が開発されている。溶媒が水になるため、今までの溶剤とは違った解釈が必要となり、分散剤である活性剤やpHに十分配慮しなければならないことが解説された。
自動車用塗料の開発技術は、化粧品開発にも大いに役立てることが出来ると感じる講演であった。
(前野広史)