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第38回「SCCJセミナー」スキンケアの基本―保湿の重要性とその製剤技術

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  • 第38回SCCJセミナーの様子 2
  • フリーディスカッションの様子1
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  • フリーディスカッションの様子3
  • フリーディスカッションの様子4
第38回SCCJセミナー
「スキンケアの基本−保湿の重要性とその製剤技術」

期日:2011年9月30日(金)
会場:パシフィコ横浜 会議センター

今回は274名のご参加を頂きました。
SCCJセミナー委員会より、レポートが届きましたので掲載致します。また、こちらのレポートはSCCJ Journal Vol.45-4(12月末発行号)へ掲載予定です。



1.【皮膚の保湿機構】東北大学 名誉教授/田上八朗 先生

正常な皮膚を維持する上で皮膚角層の担う役割は大きく、その角層の保湿(水分保持)の重要性について、実際の皮膚所見スライドを多数交え、解り易く講演頂いた。
 講演では、皮膚の存在意義から始まり、皮膚の水分保持の重要性、その為には皮膚表層の角層が大切であることを魚鱗癬などの症例写真を示し説明があった。角層の持つ水分保持能やバリア機能は、皮膚の各部位毎のターンオーバーとも関連し、最適な状態を維持するように角化細胞は増殖・分化している。これら角層の機能が低下した例として、お年寄りと若者の角層の比較、さらにアトピー性皮膚炎の皮膚の特徴とその角層との関係などをヒト試験の知見を踏まえ紹介された。角層の変化が、皮膚の加齢や病気とも強く関係していることが良くわかる内容であった。また、講演には、田上先生留学先であるクリーグマン先生の話から、田上先生が開発された皮膚表面の電導度測定試験及び、電気容量測定試験との結果の違いなども紹介され、角層研究の歴史の一端がわかる内容であった。そして、本セミナーの特徴でもある夕方のフリーディスカッションにおいても、多くの参加者が田上先生を囲み活発な質疑応答がなされていた。
(瀧野嘉延/味の素(株))
 

2.【皮膚の水分量とシワ −その測定・評価法−】エムティーコンサルティング/高橋元次 先生

皮膚角層の水分量とシワの関係について、皮膚表皮の様々な測定方法の説明と共に、シワと角層の保湿との関連について講演頂いた。
皮膚角層の水分量測定は、これまでの開発経緯から第1〜第3世代まであり、各世代毎にそれらの測定方法と特徴について解り易い説明があった。すなわち、第1世代では電導度測定に代表される電気特性の評価、第2世代では赤外分光などの分光学的な手法による評価、そして、第3世代では角層の深さ情報と水分量を計測できるin vivo共焦点ラマン顕微鏡について、原理も含めた各測定方法の特徴や限界点などを比較しながら紹介頂いた。   
また、シワの測定に関しては、レプリカ法、共焦点顕微鏡、in vivo法(パターン投影法等)などの測定方法の説明と共に、シワを評価するパラメーターについて説明された。シワが起きる原因の1つとして、角層の水分量の低下やそれに伴う角層の肥厚化による皮膚の柔軟性の欠如が挙げられていた。最後に保湿クリームによるヒト試験の結果を基に、保湿によるシワへの影響について紹介され、評価方法と実例を踏まえ、わかり易く有用な講演であった。
(瀧野嘉延/味の素(株))
 

3.【保湿剤の応用と皮膚における有用性】(株)コーセー/上原静香 氏

化粧品製剤には保湿効果を付与するために様々な「保湿剤」が配合されているが、剤形や目的によって適宜選択することが望ましい。本講演では、保湿の基本的な考え方から始まり、保湿剤の種類及び特徴、保湿製剤の設計、保湿製剤の皮膚への有用性及び評価法について広く研究事例を交えてご講演頂いた。例えば、天然保湿因子(NMF)の製剤化である。NMFのように電解質成分が多く含まれるものをO/Wエマルション製剤に多量に配合すると、乳化粒子が凝集するため安定性が悪くなる。一方でその解決策としてリゾリン脂質を用いた乳化系では、高い耐塩性を有するために電解質成分を安定的に多量に配合することが可能となることなどを例示された。この他にも水分保持能を有した高分子の開発、生体内保湿因子の産生を促進する素材、生体の保湿メカニズムを模した製剤設計、種々の有効性評価法など多岐にわたる講演であった。
(水越興治/ポーラ化成工業(株))
 

4.【製剤によるうるおい・保湿(Ⅰ) αーゲルの応用】 (株)資生堂/岡本亨 氏

スキンケア化粧品では、「保湿」と「うるおい」の両立が重要である。基剤設計では塗布膜の物性から「水を保持する作用」「水の揮散を抑制する作用」を高いレベルで両立することが求められる。この両方の特性を達成できる製剤技術として、α-ゲル基剤について基礎物性から製剤化時の保湿、うるおい特性にわたりご講演いただいた。α-ゲル基剤は広く活用され、リジッドなラメラ構造をとり水の揮散を防ぐ閉塞性と、それ自身が水を保持する保水性の両面を有す。リジッドなラメラ型の分子集合体を構築するには高級アルコールのような両親媒性物質が必要であるが、これらは一般に相互作用が強く結晶性が高い。α-ゲルの研究から、これらの物質を安定に製剤化するためには、うまく混和する界面活性剤の選択の重要性が明らかとなっている。この考え方はセラミドや脂肪酸の安定配合にも活用され製剤の大きな進歩につながっている。αゲルは多成分の組み合わせ技術であり研究の余地がまだ広く残され、これからの研究の進展に期待を感じさせる講演内容であった。
(水越興治/ポーラ化成工業(株))
 

5.【製剤によるうるおい・保湿(Ⅱ) セラミドの応用】 花王(株)/片山靖 氏

角層細胞間脂質の主成分であるセラミドを使った、皮膚の保湿機能を高める製剤技術を、結晶性が高く、溶解しにくいセラミドを安定に配合する研究から、セラミドを高浸透させる研究など、歴史を踏まえ実例を交えて紹介していただいた。例えば、高価かつ合成が困難な天然セラミドに匹敵する保湿能を有した擬似セラミドを用いることで、荒れ肌モデルの角層水分保持効果が向上し、更に、擬似セラミドと脂質の混合エマルションを用いて、ラメラ構造の再構築を確認し、皮膚水分量が優位に高くなった事例である。また、擬似スフィンゴシンをNMFの一種である乳酸で塩にしたことで、低濃度側でヘキサゴナル液晶、高濃度側でラメラ液晶を形成し、擬似スフィンゴシン、水との3成分系で広いラメラ液晶領域を形成することを紹介いただいた。また今後は保湿効果向上のメカニズムを解明しそれに立脚した製剤開発が重要であるとの見解を示された。
(水越興治/ポーラ化成工業(株))
 

6.【製剤によるうるおい・保湿(Ⅲ)エマルション膜】ポーラ化成工業(株)/酒井裕二 氏

スキンケア化粧品において実際に効果を発現する化粧膜、特にエマルション膜の機能について評価法を交えて紹介するとともに、使用感を向上させる工夫にも言及した内容であった。エマルション化粧品の機能として保湿性と閉塞性が求められるが、両者は相反する機能であり両立させることは困難である。そこで、親油領域に水を分散させると同時に親水領域を強固にすることで、エマルション膜の保湿性と閉塞性の両方の機能を高めることに成功した。また、油膜の上に水和ゲル膜を形成する2重構造とすることで、ベタツキがなく、なめらかなエマルション膜を得ることが出来たとのことである。
実際に機能・効果を発現するエマルション膜の設計や機能性の評価、使用感の向上にまで踏み込んでおり、スキンケア開発に非常に有用であると思われる。さらに、エマルション膜の3次元構造解析など、従来とは異なるアプローチが若手研究者の参考になる講演であった。
(山村達郎/(株)ノエビア)
 

7.【繊維製品のしわ及び繊維製品の着心地について】ユニチカガーメンテック(株) 顧問/関谷理 氏  

化粧品と同様に肌を守る役割をする衣服について、水との関係に注目した講演である。前半は繊維製品のしわについて、その発生や試験方法、防止加工を中心にお話をいただいた。繊維製品においても、しわの生成には水分が大きく影響することが示された。また、水分と同時に温度も影響し、温度が高いほど強固なシワを形成する。皮膚の角層もケラチン繊維でできていることから、共通することも多いと思われる。評価法については、皮膚とは異なるアプローチがなされている。繊維製品のように皮膚だけを取り出して評価することは不可能であるが、何らかのヒントになると考えられる。
後半は水分と着心地について、評価法と併せながらご講演いただいた。繊維製品の吸湿性や保湿性、また、発汗時の衣服のまとわりつきなど、快適な着心地を追求するための取り組み等をご紹介いただいた。化粧品における心地よさの追求にも、多くのヒントが含まれた講演であった。
(山村達郎/(株)ノエビア)