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第44回「SCCJセミナー」実践メークアップ化粧品〜機能性と製剤化技術〜

実践メークアップ化粧品〜機能性と製剤化技術〜


2014年9月26日(金)於:きゅりあん
参加者は196名でした。



講演①「日本の化粧文化〜ハニワメークから小麦色、そして美白、ツヤメークへ」
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス ポーラ文化研究所 津田 紀代 氏
日本の化粧文化について、原始・古代、中世・近世、近代、現代の4つの時代に分け、時代ごとの化粧に関する考え方やその意味についてご講演頂いた。原始から近世においては、赤化粧、白化粧、黒化粧と3種類の色を使い分け、時代ごとにそれらの意味合いや目的も異なっているとのことであった。近代以降は、これら3種の色に黄色などが加わり、多色化し、さらに欧米化粧の影響を受けるようになり、化粧はより多様化していった。近世(江戸時代)では、肌の色を白く見せることに関心が高く、美白レシピが多数紹介されていたが、白いだけではなく境目を見せない、自然に見える化粧が重要との美意識であった。さらに、肌を白くすることが目的ではなく美肌にすることが美白の究極の目的であったとの話は、現在の化粧の考え方にも繋がり興味深かった。史実に基づき、文献等から各時代の違いや特徴を、多数の写真を交えて紹介して頂き、新しい発見ができた講演であった。
(味の素株式会社 瀧野嘉延)



講演②「乳化ファンデーションにおける仕上がり、化粧持続性と使用感の制御」
花王株式会社 メイクアップ研究所 永井 裕子 氏
ファンデーションの4 種類の剤型の違いとその特徴を説明され、その中の乳化ファンデーションについて講演頂いた。まず、乳化ファンデーションに求められる性能を化粧持続性、仕上がり、安定性など5 つの観点からまとめられた。特に、化粧持続性を高めるため、ファンデーションの皮脂・汗への濡れ防止、及び、肌への密着性の向上という視点から、撥水、撥油性の高いフッ素変性シリコーン、密着性を高める皮膜形成剤としてトリメチルシクロケイ酸など具体的な説明があった。また、より高い撥油性と皮膜強度を目指して、フッ素・アルキル共変性シリコーンの開発事例についても紹介頂いた。最後に、乳化ファンデーションの2 種類の剤型であるW/O 型、O/W 型について、それぞれの特徴と課題、そしてその課題を克服する事例としてオキサゾリン変性シリコーンを利用した「W/O 乳化技術の開発」と「そのファンデーションへの応用」についての報告があった。乳化ファンデーションの一般的な特徴、課題から、その課題を解決する開発事例を具体的に説明頂き、わかりやすく、有益な講演であった。
(味の素株式会社 瀧野嘉延)



講演③「機能性素材を配合した、化粧持ちに優れるパウダーファンデーションの開発」
ポーラ化成工業株式会社 浅海 千明 氏
化粧崩れは皮脂のほかに汗による色調変化や手や衣服による物理的なものによって引き起こされる。化粧崩れの一つである「テカリ」では、皮脂中の遊離脂肪酸に光沢との相関が顕著に確認された。そこでこの遊離脂肪酸を選択的に吸着するナトリウム型モンモリロナイトの層間を酸化亜鉛前駆体で修飾した粉体を開発した。また、化粧崩れの一つである「ムラ」は、肌上の粉体が一部に偏って粉だまりを起こすことにより発生する。パウダーファンデーションの塗布表面をSEMで確認したところ、塗布直後は粉体が均一に並んでいたが化粧崩れが起きると凸凹ができるということがわかり、化粧直しをしようとすると、粉が段差に引っかかってさらなる凸凹を生むことがわかった。そこで、薄片状の粉体を多く含んだファンデーションを用いたところこの凸凹をうまくカバーし、再び均一な塗布面をもたらすということがわかった。化粧崩れをもたらす原因はいくつか存在し、その原因に合わせた対策をとることが重要であることを再認識した有用な講演であった。
(株式会社ナリス化粧品 寺内友広)



講演④「口紅の嗜好性の時代変遷と、それに伴う製剤技術の進歩」
株式会社資生堂 リサーチセンター 池田 智子 氏
近年の口紅購入者の嗜好性を決定づける因子につや・うるおいが挙がっており、口紅市場の中心は「つや・うるおい口紅」へと移行し、高屈折率油分の配合等により高いつやを実現し、水・油に溶解する油分の配合でうるおいを付与させてきたが、高いつや・うるおいを実現させる技術開発と背反し色残り、カップへのつきにくさでは高い不満度が出てきた。演者は口紅を塗布した際に、色材固定化相から油分がしみ出し、透明膜が形成される二層分離機構を設計した。色材固定化相には高粘度油分等を選択し、しみ出し相には色材固定化相と混合しない、色材が分配しない、つや・粘度が高い油分が選択された。この2相の油分同士は、相溶しないためスティックに成型した場合非常にもろい。そこで2相を1相状態で存在させるための揮発性の油分を配合し均一な状態を保持させ、塗布時に掛かるシェアで口紅構造を破壊し、揮発成分がなくなることで2相分離状態を再現させるような処方系を確立させた。今後の口紅開発のヒントになる大変有用な講演であった。
(株式会社ナリス化粧品 寺内友広)



講演⑤「アイメーク化粧品の機能性と製剤化技術」
株式会社コーセー 研究所 メイク製品研究室 宇田川 史仁 氏
アイシャドウ、アイブロウ、アイライナー、マスカラの一般的な剤型と製剤化技術及び品質管理に関する内容で、特にマスカラついては開発事例を紹介頂いた。マスカラは油性と水性の2 タイプがある。水性タイプは、水系の樹脂エマルションとワックスを配合し乳化したお湯で落とせる「フィルムタイプ」が主流。油性タイプは、日本人特有の下向きのまつ毛に対して、高いカールキープ力と化粧持続性を保持するため日本独自の進化を遂げ、近年では硬さによるカール形状の固定としなやかなテクスチャーでカールを保持する効果が求められている。演者はこのような背反する機能を付与させるために、硬いカルナウバワックスから非晶質の樹脂成分を濃縮することで、柔軟性と硬さを併せ持つカルナウバロウエキスを開発、硬さに依存するカール効果と、柔軟性によるカールキープ効果を実現していた。今後のマスカラ開発にヒントとなる有益な講演であった。
(株式会社ナリス化粧品 寺内友広)



講演⑥「ネイルエナメルを構成している成分と処方化技術」
ベルジュラックジャポン株式会社 技術G 大森 徹 氏
おしゃれに欠かせないアイテムのひとつである「ネイルエナメル」について、その歴史から、配合成分、さらに爪の構造やお手入れ法といったネイルケアまで広くご講演頂いた。最初のネイルエナメルが発売されたのは、1920年頃のアメリカとされている。当時から基本的な処方構成は大きく変わっていないが、発色の良い顔料の開発はもちろん、沈降や変色といった安定性上の課題に対しては、内容物、容器の面から常に技術改良が加えられ、現在の処方に至っている。また、広くネイルケアという観点では、ベースとなる爪自身の生理的特徴やお手入れ方法を知ることも重要である。講演では、爪や周辺の皮膚構造及び物理的な特徴、さらに爪を守る効果のあるベースコートやネイルパックなどのお手入れ品について、幅広く説明して頂いた。製剤の特殊性もあり、普段あまり学ぶことのできないネイルエナメルについて、幅広い知識を得ることができ、価値のある講演であった。
(ポーラ化成工業株式会社 工藤 大樹)



講演⑦「特殊メイクのおもしろさ」
株式会社メイクアップディメンションズ 江川 悦子 先生
映画やドラマをよりリアルに感じさせるために、特殊メークは重要な技術である。演者は、この特殊メークの第一人者として、現在も世界を舞台に活躍している。講演では、多くの作品の中から、主に映画やドラマの中で女優・俳優を見事に「老けさせた」実例をメーク前後の写真や動画とともに紹介して頂いた。世の中の女性の多くは、「老けさせる」メークを望むことはほとんどないと思うが、特殊メークでは通常のメークと逆のこと、つまりあえて顔の陰影を際立たせるようなメークを施すほか、特に首のしわを強調して増やすというテクニックは興味深かった。また、作品を作る上で光の効果も重要な要素であり、演者自身も工房で設計した作品を戸外で撮影したとき、イメージと大きく異なった見え方になってしまったことがあるなど、苦労話もお聞かせ頂いた。異なる目的ではあるが、「顔を作る」という点でわれわれ化粧品技術者も多くのことを学べた、非常に貴重な講演であった。
(ポーラ化成工業株式会社 工藤 大樹)