EVENT イベント

第203回「講演会」

平成28年2月10日(水)に大阪薬業年金会館において、国立研究開発法人 理化学研究所 片岡洋祐先生をお招きし、「疲労科学から美容・健康産業への新展開」と題して、第203回大阪支部講演会が開催されました。83名の参加者は、疲労を、統計結果も踏まえ、脳科学という観点で脳内の神経伝達物質の役割を科学的に解説する先生のお話しに興味深く聞き入っていました。

講演の内容としては、大阪地区の統計から現在疲れていると感じている人が50%以上におよび、そのうち約40%の人が6ヶ月以上感じており、それらの人は慢性疲労の状態と言えること、疲労の原因として、精神ストレス、身体ストレス、環境ストレス、睡眠リズム障害、感染、病気などが挙げられること、日本疲労学会が定義した疲労の定義として、過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた心身の活動能力・能率の減退状態であることを説明頂きました。「疲労」は独特の不快感、休養の願望、活動意欲の低下を伴うことが多く、これを「疲労感」と呼ぶこと、また「疲労感」は感情であるため、コントロールが可能とのことを説明頂きました。

また、6ヶ月以上疲労感が持続している慢性疲労症候群では脳内炎症が起きており、これを遷延化させないために食薬・生活習慣・サービス・環境・文化・教育等が必要となってくることを力説されました。特に、脳内神経物質の働きを車に例え、興奮させるアクセルの働きをするグルタミン酸、興奮を抑制するブレーキの働きをするGABA、このアクセルとブレーキを調整するギアの働きをしている神経系が脳全体に張りめぐらされており、ギアをトップにするドーパミンやギアをローにするセロトニンの働きなどによりバランスを保ち、このバランスが「こころ」の健康に重要であることが、非常にわかりやすく伝わってきました。

最後に、先生が開発したKOKOROスケールシステムを用いて、スポーツジムでの運動による気分改善効果を評価した結果などを紹介して頂き、気分の変化を常時測定することによって、主観的な幸福感を測定することが可能になったということを力説され、まだまだ研究途上ではあるものの疲労科学の研究は人の幸福を追求する科学であることが感じられ、化粧品の研究開発とも通じるものがあると感じました。

関連リンク
第203回「講演会」