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第255回「学術講演会」のご案内

  • 講演会会場風景
  • 中村典子氏の講演
  • 飯村兼一氏の講演
第251回「学術講演会」が11月4日学士会館で、83名の聴衆を集めて、以下の2題のテーマで開催されました。
1題目は、サントリーホールディングス(株)の中村典子氏より、「夢の青いバラ−アプローズ−の誕生」という演題でご講演いただきました。花言葉で「不可能」とまでいわれた“青いバラ”、すでに昨年(2009年)より「サントリーブルーローズ アプローズ」として市販されております、この“青いバラ”の開発経緯を中心に、サントリーの花事業戦略、バイオテクノロジーについてのお話でした。花に含まれる色素は、多彩な花色に関わらず、基本骨格は、ペラルゴニジン型、シアニジン型、デルフィニジン型の三種のアントシアニジンであり、これらがどの位の量比で存在しているかで、花の色の基本的な運命が決まるとのことであり、バラには存在しない青色であるデルフィニジン型を生合成させる遺伝子を導入するというものです。
サントリーの企業理念である「やってみなはれ」という精神が研究開発活動に結びついていることと、研究スタートから14年という開発期間、商品化までの19年という長期間に渡る研究内容及び商品化までの大変さが感じられる内容でした。特に、遺伝子組み換え作物の商品化について、生物多様性影響評価等のご紹介は、大変興味深いものでした。
2題目は、宇都宮大学院工学研究科学際先端システム学専攻 飯村兼一氏より、「単分子膜の科学」という演題でご講演いただきました。水に不溶な両親媒性分子を水面上で展開して形成される展開単分子膜を中心に、吸着単分子膜、自己組織化単分子膜などを含めた膜物性解析、さらに生体膜モデルへの応用事例などについてご紹介いただきました。その一例として、アルツハイマー発病の一因とされる脳細胞膜へのアミロイドβペプチドの蓄積といった現象に対し、脂質単分子膜へのアミロイドβペプチドの吸着状態を観察し、メカニズムを考察された事例などについて述べられました。
実際の生体膜では、脂質同士や脂質−タンパクなどが複雑に組み合わされて機能しており、それら全てを完全に模倣することはできません。しかし、脂質分子による単分子膜を生体膜モデルとして捉え、細胞膜の機能発現を明らかにしていく生体膜モデル研究から、複雑な生体膜機能を理解するための有用な情報が得られることを示唆した、大変興味深いものでした。(学術部会A)