EVENT イベント

第258回「学術講演会」のご案内

  • 講演会・会場風景
  • 三宅登志夫氏のご講演
  • 賀来群雄氏のご講演
第258回「学術講演会」が10月27日学士会館で、114名の聴衆を集めて、以下の2題のテーマで開催されました。1題目は、花王(株)の三宅登志夫氏より、「エコ価値を進化させた超濃縮液体洗剤の開発」という演題でご講演頂きました。三宅先生は、花王(株)に入社されてから、基礎科学研究所、化粧品研究所を経られ、現在、国内液体洗剤の開発に取り組まれておられます。ご講演では、衣料用洗剤において、製品のコンパクト化を実現する「高濃縮化技術」と、すすぎ時に界面活性剤をすばやく洗い流す「高速すすぎ技術」の2つの新技術を開発され、これらの技術に基づいた新・超コンパクト液体洗剤「アタックNeo」が発売される経緯についてご紹介頂きました。この洗剤は、洗濯全般で排出されるCO2を大幅に削減すると共に、「優れた洗浄力」だけではなく、すすぎ回数の低減による「節水」、「節電」、「時間短縮」という今までになかった全く新しい価値をお客様に提案されています。なお、すすぎ回数を低減させるためには、洗濯機の設定をお客様に変えていただく必要がありますが、この点についても、お客様が容易に設定変更できる方法を検討し、リーフレットやウェブを通して紹介することで、お客様からの満足を得られているとのことでした。最後に、近年お客様の洗剤に対する価値基準が変化しており、「衣類のニオイ」を重視される方が増加しているとの最新の調査を元に、ニオイの原因となる菌種の同定とその対策を検討され、「アタックNeo抗菌EXパワー」の上市にいたる経緯についてもご紹介頂きました。
2題目は、デュポン(株)の賀来群雄氏より、『持続可能な社会を目指すデュポン社の挑戦』という演題で御講演頂きました。賀来先生はデュポン(株)に入社されてから、新規高分子の開発、特に超耐熱樹脂、フッ素材料の開発および商品化、バイオ高分子微細構造制御手法の開発、生分解樹脂の汎用化研究と用途開発、バイオ素材の用途開発に取り組んでおられます。ご講演の内容としては、現在世界規模で我々が直面している大きな三つの問題:(1)人口増加に伴う食糧不足(特に、開発途上国における人口増加スピードによる深刻な飢餓問題)、(2)石油消費の増加と化石燃料の枯渇(短期的には石油価額の乱高下、長期的には石油価額の高騰化の原因)、(3)地球温暖化と天候不順(二酸化炭素発生量の削減が急務)、に対応すべき未来について、デュポン(株)の事例を基に御話しを頂きました。これら世界規模での問題は複雑でかつ互い関連しており、その解決は急務を要しておりますが、従来の技術と手法だけでの解決には限界があります。デュポン(株)はサイエンスを礎にする会社として、解決策の一つの鍵はバイオ技術の開発と速やかな商業化であると考えられており、本講演では最初に商業化に成功した1,3-プロパンジオールの事例を中心とした環境負荷軽減の技術とその商品例、そして1,3-プロパンジオールを出発原料とする高分子材料の最新用途例について、非常に興味あるデータを御紹介頂きました。(学術部会A)