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第261回「学術講演会」

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  • 武田先生の講演
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第261回「学術講演会」が10月29日学士会館で、約100名の聴衆を集めて、以下の2題のテーマで開催されました。
1題目は、武田コロイドテクノ・コンサルティング(株)の武田真一氏より、『化粧美を演出するナノ粒子の分散とその最新評価法』という演題で御講演頂きました。武田先生は、コロイド工学・コロイド科学に関するテーマとして、特に、微粒子・ナノ粒子濃厚分散系の分散・凝集特性、微粒子・ナノ粒子界面特性の研究と評価方法の開発に取り組んでおられます。ご講演の内容としては、ナノ粒子について、(1)分散性の定義など基本的事項、(2)スラリーなどの濃厚分散系の最新の分散性評価法、(3)非水系の分散を支配する界面特性とその評価法(微粒子・ナノ粒子の親水性、疎水性評価法)について、化粧品に良く使われる粒子(酸化チタン、酸化亜鉛)を対象に、粉体の水や油剤に対する濡れやすさ、分散・凝集の程度の評価など実用的な事項を分かりやすく御話しを頂きました。分散安定性の定義は、時間が経っても粒子の分散状態が変わらないこととされています。分散安定性を高める(粒子の沈降を防ぐ)には、溶媒の粘度を上げる、粒子を小さくする、粒子間斥力の付与などの方法があります。粒子間斥力は粒子表面に電荷を付与するか、立体障害を付与する官能基を導入することにより得られ、一般的に、粒子はゼータ電位を大きくすると合一、凝集は起こり難く沈降し難くなり分散安定性が向上するとされ、この分散安定性はブラウン運動するナノ粒子のみに該当します。分散安定性を評価する方法として、ディスク遠心式粒度分布測定、ゼータ電位測定、遠心沈降分析法、パルスNMR法などを御紹介頂きました。ファンデーションやサンスクリーンなどの化粧品における分散は、これらの化粧品の目的に適した粒子の分散状態をみて良分散の基準を決める必要があることも述べられました。
2題目は、独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の三輪哲也氏より、「深海底探査の新展開−深海底環境の謎とそこに眠る可能性−」という演題でご講演頂きました。ご講演では、まず始めに有人潜水船「しんかい6500」などの深海調査活動について、敷設撤去、地震計回収、地形・資源・生物・環境調査などをされており、15%が機構内での利用で、7割は公募によるとのご紹介を頂きました。そして、深海の環境は地上とは大きく異なっているため、たとえば、深海の高圧環境下で生きる生物を研究するために、高圧の状態を保つことのできる耐圧容器に入れて持ってこられるなどの実例のご紹介を頂きました。次に、現在JAMSTECで計画されている次世代無人探査機についてもご紹介いただきました。走って探査する巡航型の「ゆめいるか」と「じんべい」、そして、一箇所に止まって作業する作業型の「おとひめ」の計画についてです。これらは、海底資源の調査に使用されるそうですが、日本の近海は、海底資源に恵まれているとのことです。これは、地殻のプレートが動いて海溝に沈みこむ動きをしているために、プレート上の資源が日本近海で濃縮されるからだそうです。例えば、海水中のO2がないと還元的な堆積層が海底にできるそうですが、地球規模の歴史として過去に何度かあったため、レアメタルなども、日本近海の海底に濃縮されているようです。また、皆さんご存知のメタンハイドレートも大量に存在しているそうです。ただし、資源開発と同時に環境保護を考える必要がある点についてもご指摘いただきました。海底資源の豊富な場所では、硫化水素やメタンガスを食べて生きるバクテリアが生息しており、さらに、そのバクテリアを食べる生物が存在しているためです。人工的に海底鉱床を作ることも研究されているそうです。熱水が噴出してきますが、深海は高温高圧状態であることから、超臨界水についての理解が必要とのご指摘も頂きました。ご講演では、このように様々な観点から見て、深海底環境の謎とそこに眠る可能性のお話を頂きましたが、ご講演後も、会場からは、今後の日本近海の開発の見通しなどについて会場から熱い質問が寄せられました。(学術部会A)