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第260回「学術講演会」のお知らせ

  • 学術講演会・会場風景
  • 岩﨑余帆子先生のご講演
  • 山口真美先生のご講演
第260回「学術講演会」が7月23日学士会館で、110名の聴衆を集めて、以下の2題のテーマで開催されました。
1題目は、ポーラ美術館学芸課長の岩余帆子先生より、「美術における女性の表現〜ポーラ美術館コレクションを中心に〜」という演題でご講演いただきました。先生は19世紀のフランス美術がご専門で、「週刊西洋絵画の巨匠:ドガ」(小学館)をはじめとした著書も執筆されております。ご講演では、ポーラ美術館収蔵の作品を中心に、特に近代の女性をテーマとした絵画を数多くご紹介いただきました。絵画に描かれている髪型・服装・構図などから読み取れる作家の意図、女性を取り巻く社会的状況なども含めて解説をいただき、絵画が描かれた時代の人々が作品から感じたであろう感覚に触れることができました。ご講演の後半では、特にルノアールと岡田三郎助の描いた女性像についてお話いただきました。ルノアールは青や赤を用いることで、岡田はキャンバスではなく紙の上に油絵で描くことで、意図する女性の肌の質感を表現していることなど、われわれ化粧品技術者にも大変参考になる内容であり、それぞれの作品にじかに触れてみたくなるようなご講演内容でした。
2題目は、中央大学文学部の山口真美先生より、「赤ちゃんは世界をどう感じているか」という演題でご講演いただきました。先生は、『美人は得をするか「顔」学入門』(集英社新書)等の著者であり、長年顔認知のご研究をされており、最近では赤ちゃん実験により、人の知覚の発達・脳のメカニズムについてご研究されておられます。今回のご講演では、「乳幼児を取り巻く感覚環境を考える」との副題により、生後2〜7ヶ月の赤ちゃん実験により、人の視覚能力がどのように発達していくのかを中心に、具体的実験風景を交えて、ご説明頂きました。この中で、人の視覚能力として、「形を見る能力」と「動きを見る能力」があり、これら能力は生後7ヶ月で完成され、赤ちゃんは「動きを見る能力」に優れる等、大変興味深い内容でした。また、生後7ヶ月で物体の影を認識し、錯視的な知覚が備わっている等、赤ちゃんの能力には驚きましたし、どのようにしてこのような能力が備わっていくのか等興味深いテ−マであると感じました。
 更に、視覚だけではなく、嗅覚の発達についての具体的実験結果もご説明して頂き、乳幼児を取り巻く感覚環境についての先生のお考え等、大変興味深いものでした。(学術部会A)