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第265回「学術講演会」

  • 会場風景
  • 藤本先生のご講演
  • 出口先生のご講演
第265回「学術講演会」が3月11日学士会館において約70名の聴衆を集めて、以下の2題のテーマで開催されました。

1題目は、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)の素粒子原子核研究所の藤本順平氏より、『先端加速器で宇宙の起源と物質の謎に挑む −素粒子発見とノーベル賞−』という演題で御講演頂きました。加速器の基本的な原理から、高エネルギーを得るために東京ドーム約33個を収容できる巨大な装置が必要であることをわかりやすくお話いただきました。この加速器を活用し、原子核を壊すことでそこに存在している種々の素粒子を実験的に確認していること、そしてその成果は、宇宙の起源を解明することにとどまらず、生化学や医療にも活用されていることを具体例を挙げてご紹介いただきました。講演の冒頭、「われわれを取り巻く宇宙は、今みえているものが全てではなく、未知なる力(能力)がまだまだ隠されている」と強調されました。それを解明するために、世界中の素粒子研究者が力合わせ、広い視野をもって真実と向き合い、綿密な仮説のもと実験に取り組んでいることを実感しました。我々、化粧品技術者にとってもこの研究姿勢は大変参考になる有意義な講演でありました。 

2題目は、独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の出口茂氏より、「深海の極限環境に着想を得たボトムアップのナノ乳化技術」という演題でご講演頂きました。ご講演では、まず始めに海洋研究開発機構の活動についてについてわかりやすくご紹介頂きました。次に通常の乳化と深海の極限環境に着想を得たボトムアップのナノ乳化の違いについて説明いただきました。通常の乳化はトップダウンのプロセスであり、粗大油滴に外力を加えて引きちぎる操作を繰り返して、油滴を微細化するが、油滴サイズが小さくなるにつれて更なる微細化が困難になり、この課題を解決するため、熱水噴出孔から噴き出す高温・高圧の水が示す特異な性質に着目したそうです。例えば、ドデカン(C12を含む油)を含んだ水を250気圧の高圧下で加熱していくと、337℃付近でドデカンと水が完全に混ざり合って均一な溶液となり、油滴は消失するとのことです。熱水噴出孔から噴き出す熱水が冷たい深海水によって瞬時に冷却されるのと同様に、この均一な溶液を毎秒200℃を越える速度で室温にまで急激に冷却することにより、ナノ油滴を生成することに成功したとのことでした。超臨界状態の水と油の均一溶液の相分離によってナノサイズの油滴を生成する手法を多くの動画を用いてわかりやすく紹介いただきました。
(学術部会A)