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化粧品事典

編集・企画
日本化粧品技術者会
発行・発売元
丸善出版株式会社
ISBN
4-621-07342-7 C3540
書籍注文専用TEL/FAX
現在絶版
総論
  1. 化粧品とは(化粧品と医薬部外品)
  2. 化粧品のマーケット(化粧品市場の統計的分類/市場規模/流通形態と販売業態/輸出入)
  3. 化粧品の歴史(化粧の起源/西洋の化粧文化の流れ/日本の化粧文化の流れ/民族の化粧文化)
  4. 化粧と法律(化粧品に関する法規制の変遷/化粧品規制の国際的ハーモナイゼーション/化粧品にかかわる法律)
  5. 化粧品の種類(スキンケア化粧品/メークアップ化粧品/ヘアケア化粧品/ボディケア化粧品/フレグランス化粧品)
  6. 皮膚の構造と機能(皮膚のしくみと働き/皮膚の色/肌質/皮膚の感受性/敏感肌/皮膚のリズム/皮膚のホメオスタシス/皮膚の老化/しわ/肌荒れ/しみ・そばかす・くすみ/はり・たるみ/きめ)
  7. 皮膚と環境(苛酷な環境から生体を守る皮膚/環境要因と皮膚との相互作用/環境と上手に付き合うコツ)
  8. 皮膚付属器官(唇の構造と生理/爪の構造と生理/毛髪の構造と生理)
  9. 化粧品の効能(スキンケア化粧品/メークアップ化粧品/ヘアケア化粧品/ボディケア化粧品)
  10. 化粧品の心に及ぼす効果(ストレスと皮膚/メークアップの心理効果/香りによる効果/化粧療法:コスメティックセラピー)
  11. 香りと化粧(香りの楽しみ方/生きるための香り/化粧のための香り/香りと健康/香りと人とのかかわり合い/フレグランス化粧品(香水)の近代の歴史/フレグランス化粧品の香り/香り(匂い)の一般的性質/香料とは)
  12. 化粧品の原料(油性原料/界面活性剤/保湿剤/高分子物質/色材/香料/紫外線防御材/防腐剤・殺菌剤/酸化防止剤/生理活性成分)
  13. 界面科学(界面とコロイド/両親媒性物質とその性質/可溶化とミクロエルマション/乳化とエマルション/粉体と濡れ・分散)
  14. 化粧品のレオロジー(レオロジーとは/レオロジーの対象/化粧品とレオロジー)
  15. 化粧品と色(色を感じるサイエンス/照明と色/肌の色彩学/光とメークアップ)
  16. 化粧品の品質(安定性/使用感とその評価/微生物汚染と防腐)
  17. 化粧品の安全性(化粧品と皮膚トラブル/化学物質の危険性の予測/化粧品の安全性評価)
  18. 化粧品をつくる(スキンケア化粧品の製造法/メークアップ化粧品の製造法/ヘアケア化粧品の製造法/ボディケア化粧品の製造法/フレグランス化粧品の製造法)
  19. 化粧品の容器と包装(容器,包装の種類と素材/容器,包装の機能と役割/容器,包装の制約)
  20. 化粧品と環境(原料/容器・包装関連/製造環境と環境負荷/分析試薬)
  21. 化粧品関連情報(インターネット情報/有料データベース/書籍,雑誌情報/業界関連団体情報)
各論
  1. 五十音順
付録

日本における化粧品関連法規制の経緯/化粧品に関する規制(日本・米国・EU比較)/米国における化粧品のカテゴリー分類/おもに化粧品製造(輸入)販売業者及び消費者にかかわりの深い法律/おもに化粧品製造(輸入)販売業者にかかわりの深い法律/染毛料原料規格収載成分一覧表/表示指定成分表/防腐剤の最大配合料/紫外線吸収剤の最大配合料/参考文献

書評

平和な世の中が続き、平均寿命が延びると化粧品の社会的役割は一層大きくなっている。化粧品は一般に女性を対象としたものが多いが、近年は男性用の化粧品も多くの分野で拡大してきている。本書は、総論編で化粧品に関連した事項を総合的に取り上げ、説明した後、各論編では辞典としての役目をもたせ、多数の専門用語の意味を簡単にして迅速に調べられるよう工夫がなされている。一口に語るなら、本書は化粧品の総説書と辞典のハイブリッド事典である。しかも、総論では最近の知見や情報が盛り込まれ、後半の辞典では多様な事項について平易に、しかも科学的に一般読者でも理解しやすいよう説明されている点が素晴らしい。


総論編で読者を楽しませてくれるのは、化粧の歴史である。化粧そのものだけでなく化粧に対する人々の考え方の移り変わりが時代背景との関係でまとめられている。化粧が常に社会の変化や科学・化学の進歩とともに変化してきたことがよくわかり、今後の化粧の方向性を考える資料となると思われる。化粧は、健康な人の皮膚や疾病を患っている人の皮膚にも施すものである。化粧効果を理解するためには、皮膚の構造や機能についての充分な知識が必要であるが、本書では皮膚に関する最新の科学情報が紹介されており、化粧の有用性を一般に広めるには欠かせないところである。

活性酸素が皮膚を含めた老化に重大な影響をもつことが近年、医学・生物学分野で明らかにされてきている。したがって、活性酸素が皮膚の機能や構造に与える影響、さらには光老化における役割について総論編あるいは各論編でもう少し詳しく説明した項目があれば、より充実した事典になったと思われる。


化粧は皮膚の働きを変え、美しく、また若々しく見せるための手段であると同時に、化粧した本人は精神的な安らぎや満足感を味わうことができる。本来の化粧品は法的規制のため、機能性をはっきりと提示することができない弱点があるが、最近は明らかに細胞レベルや皮膚組織で機能や構造に変化を与えるものが多数市販されている。化粧品の有用性をより広め、国民の健康に役立たせるためには、製造者の責任において、各々の化粧品についてはっきりした機能について説明が可能になるよう、法制度の改正に向けて、化粧品関係者が強く働きかける努力が必要である。そのような社会的な動きを支援し、加速させる文面が本書には見られないのは残念である。


総論編では所々にQ&Aが挿入され、本書を読む際に肩が凝らないよう工夫がなされている。堅さがつきまとう事典にとっては何となくほっとするページとなっている。ただし、一部のAの内容に説明不十分で誤解を招くものがあるが、全体としてQ&Aが入っていることが本書を手にとりやすくしているといえよう。


皮膚科医の立場から見ると、本書には純皮膚科学の教科書や専門書には見られない特色がある。たとえば化粧品と関係の深いニキビ(痤瘡)の項を見るとニキビの成因、症状などの次に、ニキビができている人やできやすい人用の化粧品について詳しく1頁半にわたって多面的に説明がなされている。皮膚科医にとっては大変有用な情報を提起してくれている。現在、日本皮膚科学会においても、美容皮膚科学の領域に興味をもつ会員が増し、主要な学会においても、しばしば化粧品を含めた美容関連の話題がシンポジウムやワークショップとして取り上げられている。このような時代にあって、本書は皮膚科医にも広く読まれることと期待したい。また、化粧品関係者のみならず、医療関係者をはじめ、一般の方にも本書を辞典として座右の友にしていただくことをすすめたい。


(神戸大学医学部名誉教授 市橋正光)