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第214回講演会 (西日本)

  • 浦上克哉先生
  • 浦上克哉先生 演題
  • 出澤真理先生
  • 出澤真理先生 演題
第214回講演会を2022年9月30日(金)にオンラインで開催いたしました。
関係者を含み111名と多くの方にご参加いただきました。

1題目は、鳥取大学医学部 教授 浦上克哉先生より、『認知症予防とアロマセラピー』と題して、認知症発症の危険因子と、
その効果的な予防方法についてお話をいただきました。

浦上先生は一般社団法人 日本認知症予防学会の代表理事を務められ、TV、ラジオにも数多く出演し認知症予防の啓蒙活動をされております。
認知症は年々増えてきており2015年には520万人の患者がいましたが2025年には700万人と、65歳以上の5人に1人が発症するとの予測が
出されており、この数字は人と接する機会が少ないウィズコロナの生活様式の中では更に増える可能性があります。

 認知症発症の危険因子は年代によって異なり、45歳未満では低学歴、45-65歳では聴力低下、外傷性脳損傷、高血圧など、65歳以上では喫煙、
うつ病、社会的孤立、運動不足などが危険因子として挙げられ、認知症予防は年代年代によって行うべきことが異なる点に注意する必要があります。

 このように様々な危険因子がある中で、浦上先生はアルツハイマー型認知症患者が腐った食べ物がわからないという事象に気づかれ、
嗅神経が最初に障害を受けた後、海馬の神経に障害を受ける(物忘れ)という法則性があることを発見されました。
これは嗅神経にアミロイドβ蛋白が沈着することで起こる障害です。

 そこで、アロマテラピーの効果検証を行った結果、嗅覚障害が改善されることでアルツハイマー型認知症の認知機能が改善することがわかりました。
アロマオイルの組み合わせとして昼用アロマは認知機能改善を目的としてローズマリー・カンファーとレモンオイルの組み合わせ、
夜用アロマはリラックス効果を目的として真正ラベンダーとスイートオレンジの組み合わせが有効であり、本物のアロマオイルを用いて
正しく使用し認知症予防を行うことが重要とお話をされました。睡眠不足もアミロイドβ蛋白が蓄積しやすくなり、
アルツハイマー型認知症になりやすいとのことです。

 認知症とその予防方法についてわかりやすくお話をいただき、アロマテラピーが認知症予防になるということについて理解を深める
大変良い機会になりました。


2題目は、東北大学大学院医学系研究科 教授 医学博士 出澤真理先生から『生体に備わるMuse細胞の医療変革:アンチエイジングへの貢献の可能性』と
題して、細胞治療の手段として注目されている
Muse細胞について、機能や特徴、脳梗塞や心筋梗塞等の治療への応用、
アンチエイジングへの活用の
可能性についてご講演いただきました。

始めにMuse細胞は「体内の総合メンテナンス会社」であるとご説明いただきました。細胞は傷害を受けると死んで脱落しますが、
既存の治療法では傷ついて失われた細胞を元に戻す有効な方法はありません。しかし、Muse細胞は傷害を受けた臓器に集積し、
傷ついたり死んだりした細胞と同じ種類の細胞に自ら分化することで細胞を置換し、組織を修復します。
このようなMuse細胞が体内の組織恒常性を維持するユニークな機構を分かりやすく解説いただきました。

Muse細胞は骨髄、血液、臓器の結合組織に存在し、体内の様々な細胞に分化できる多能性幹細胞で、脂肪、皮膚、滑膜など様々な場所から採取可能で、
ヒトに限らず様々な動物種でも確認されていることをお話していただきました。

またMuse細胞の利点として、
1.体に備わる自然の幹細胞であり安全性の懸念が低いこと
2.
外科的アプローチを必要せず点滴投与で障害部位に特異的に集積できること
3.
場の論理に従ってその組織に合った細胞に分化する為、健常細胞が補充され組織が修復すること
4.体内のMuse細胞数や活性が修復に不十分な場合、点滴で補充することで修復能を強化できること
をご説明いただきました。
現在まで、心筋梗塞、脳梗塞等の7つの治験が実施されており、脳梗塞への治験結果では、公共交通機関を利用できるなど介助なしに
身の回りのことができる状態まで回復された方が1年後に約7割、さらに約3割の方は職場復帰を果たせる状態まで回復されたという
最新の結果もご紹介いただきました。
皮膚に関してはアトピー性皮膚炎に対する効果(2021)や皮膚の様々な構成細胞に分化可能な事が報告(2017)されており、
表皮水疱症に対する治験が実施されているとのことです。

Muse細胞がもたらす未来としまして、HLA適合検査や長期の免疫抑制剤投与無しに点滴で投与できるという特徴を活用することで、
離島や山間部、身近なクリニックでも治療が可能となり、医療格差が無くなる可能性があること、生体に備わる修復機構であるMuse細胞は
「自然の理に叶った」アンチエージングへ貢献できる可能性があることをお話しいただき、Muse細胞の今後に大変興味を刺激された講演でした。

最後に先生が立ち上げられたNPO法人「Museの樹」のホームページのご紹介もありました。
本日ご提示いただいたスライド資料も掲載されておりますので、ご興味のある方はご確認いただきたいと思います。