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第206回 講演会

平成29年9月5日(火)に大阪国際交流センター 小ホールにおいて、名古屋大学 大学院生命農学研究科 福島 和彦 教授をお招きし、「TOF-SIMSによる生体試料中のケミカルマッピング〜生体高分子から水溶性化合物まで〜」と題して、第206回大阪支部講演会が開催されました。

講演の内容としては、TOF-SIMSを用いた分析について、基本的な測定機器の仕組みや原理、また、TOF-SIMS分析を植物化学から皮膚・頭皮へ応用されたことを、分かりやすくお話していただきました。これまでの分析は顕微分析(→微細構造を確認)や化学分析(抽出などで物質の化学構造を確認)などがありますが、『どこに』、『どんな物質』が存在するかまでは確認できませんでした。しかし、TOF-SIMS分析では、顕微分析と化学分析の両方の機能を併せ持つので、顕微レベルで成分の可視化が可能となります。たとえば、植物(木材)に含まれる天然高分子のリグニンをターゲットとして、特異的な二次イオンスペクトルを分析することで、試料表面の画像の、どこにリグニンが分布されているのかをイメージングすることが可能です。実際の応用例として、TOF-SIMS分析は考古学に貢献しています。法隆寺で使われている古材の伐採年推定をするため、古材に含まれるヒノキレジノールやヒノキニンを解析して、伐採年推定をした事例をお話頂きました。

ヒト皮膚での応用は、「化学物質の浸透経路を非侵略的に解析する」ために、テープストリップ法とTOF-SIMSを組み合わせ、角質細胞画像に定量分析と表面分析さらに画像のイメージングを行った研究を示されました。実験にはリン酸L-アスコルビルマグネシウム(APM)とdl-α-トコフェリルリン酸ナトリウム(VEP)を用いて浸透を観察したところ、角質層に浸透したAPMとVEPがマッピング画像が作成でき、考察として角質の深さ方向のAPM量・VEP量を測定した結果、APMは5分、VEPは60分でテープストリップした7枚目まで浸透していることを観察されていました。

毛髪での応用は、ダメージ毛の水膨潤度に着目して、膨潤抑制効果を持つ水素添加パーム油がどのように毛髪に作用して効果を発揮しているのかを調べたところ、毛髪横断面のTOF-SIMSイメージング画像より、水素添加パーム油はキューティクル、コルテックス外周部に作用して、膨潤抑制効果を発揮していることを説明して頂きました。

最後に福島教授より、香粧品の共同研究を行われた日本メナード化粧品(株)様とホーユー(株)様に向けて、謝辞を述べられておりました。

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