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第51回「SCCJセミナー」ゲルの織りなす化粧品の世界‐ポリマー、レオロジーの基礎から製品開発まで

第51回 SCCJセミナー参加レポート
 2018年2月27日、大井町きゅりあんに於いて本部主催「ゲルの織りなす化粧品の世界‐ポリマー、レオロジーの基礎から製品開発まで‐」と題したセミナーに参加しました。
化粧品の製剤開発に欠かす事が出来ないゲル化剤、増粘剤に関連する貴重なセミナーだけあって、222名と多くの方々が参加していました。参加者の顔ぶれも様々で化粧品会社、化粧品原料メーカー及び原料商社の研究者、マーティング、営業担当者と職種も多岐にわたり、又世代別でも業界の大先輩から若い方々まで広く参加していました。
  今回のセミナーは、ポリマー合成の観点、またポリマーの原料化の観点、そしてそれらを使用する化粧品技術の観点からと多角的な視点でポリマーを勉強できる貴重な機会でした。私が原料開発に興味を持っていることもあり、福井大学杉原先生の講演の中で温度応答性をはじめとした刺激応答性等の最新技術を生かしたゲルの設計については、将来新しい剤型の化粧品開発に役立つ原料開発につながるのではないかと期待感が溢れました。また、資生堂の中村講師より、増粘剤は化粧品の使用感を変える上で最も重要な要素であることをお話し頂き、深く共感いたしました。他の講演も含めて充実した講演内容であり、一日で沢山の情報を入手する事が出来る貴重なセミナーでした。
 全講演終了後には別室で講師の方々と直接質問や意見交換ができるフリーディスカッションがありました。各講師のブースには長蛇の列ができ、参加者からの質問に対して活発な意見交換が行われていました。フリーディスカッションの場で伺った参加者からは、「基礎的な内容から説明頂き実用的な内容まで組み込まれていたので理解が深まった」、「水性ゲルインクの開発は化粧品開発にも応用する事が出来る」、「テーマが絞られていた為興味を持って知識が深まった」、「講演内容の資料が貼られていた為復習が出来た」等積極的な意見が寄せられました。
 最後になりますが、本セミナーを主催されたセミナー委員の方々におかれましては、1年以上前から企画し、参加者の経験値を考慮した上で計画されておられると伺いました。このような素晴らしいセミナーを開催して頂きました事に感謝致しますと共に、今回参加出来なかった皆様も是非次回はSCCJセミナーに参加して頂き、知識を得て知恵に変えて、より良い化粧品の開発に生かして頂きたいと思います。
SCCJ広報委員 田中徳文/株式会社マツモト交商



第51回 SCCJセミナー 2017年 2月27日(火)   於:きゅりあん(講演数:6題 /参加者:222名)
テーマ:ゲルの織りなす化粧品の世界 ─ポリマー,レオロジーの基礎から製品開発まで─


講演①「最近の重合技術が可能にする両親媒性高分子の分子設計と機能」
福井大学 学術研究院工学系部門 准教授 杉原 伸治 先生
 化粧品には様々な両親媒性高分子・ゲルが利用されているが、これらは製品の安定化だけでなく使用感触や外観の調整に大きく寄与しており、消費者が手に取った際に受ける印象に大きく影響を与えることができる。通常高分子は広い分布を持つが、高機能を持たせるためには精密重合により均一な分布の高分子を得る必要がある。
講演では、リビング重合により合成した水溶性ブロックコーポリマーを例に挙げて温度応答性などの刺激応答性とそれを利用したゲル化、重合を巧みに利用した自己組織化(ミセル、ワーム、ベシクル、カプセル)等の興味深い機能を生み出す分子設計について説明頂いた。
新たな高分子を化粧品原料として活用する場合には、安全性、安定性、価格などクリアすべきハードルはあるが、今後これらの高分子合成技術により、これまでにない新たな機能が付与された化粧品の創出に繋がることを期待させる有意義な講演であった。
(株式会社資生堂 小又昭彦)
講演②「それゆけレオロジー ~化粧品製剤開発におけるレオロジーの応用~」
クラシエホームプロダクツ株式会社 中川 泰治 氏
 化粧品製剤の多くは粘弾性体であるためレオロジー測定が製剤開発にとって非常に有用なツールとなる場合があり、最終製剤だけでなく処方開発段階からレオロジーを
応用することにより、幅広い範囲で有用な情報が得られる。
講演では、まず処方開発者の視点で測定自体の意味やどのような測定をすると何が分かるのかなどの基本的なことに続き、具体的な応用例を説明頂いた。
応用例として、乳液状入浴剤開発における安定性評価では乳化粒子の顕微鏡観察結果とレオロジー測定及び経時安定性結果に相関が得られ、レオロジー測定が乳化安定性評価に活用できた。また、クレンジングミルクで良好な使用感を得るための製造条件として最適な乳化速度や攪拌温度を特定できた例を紹介頂いた。
粘弾性体である化粧品製剤において、安定性や感触などに対する課題解決や製剤開発にレオロジーが更に応用できることを期待させる有意義な講演であった。
(株式会社資生堂 小又昭彦)
演題③「水溶性増粘剤による化粧品基剤のレオロジーコントロール」
株式会社資生堂 中村 綾野 氏

 化粧品の構成成分である水溶性増粘剤は水系連続相の粘度を高めて乳化/分散安定性を高め、塗布しやすくなるなどの機能向上をもたらすとともに、化粧品の使用感触、さらには塗布行為における心的満足度にも大きな影響を与える重要な要素である。本講演では寒天ミクロゲルを例に、製造方法の違いによるレオロジー特性の変化、各種物性パラメータと官能評価との関連性について紹介された。
製剤と官能評価結果を科学的に結び付けることは、とりわけ感性要素も多い化粧品分野では大きな課題である。さまざまなモデル処方から製剤の各種物性パラメータと官能評価との関連性を詳細に解析し、幅広い応用が期待される内容であった。
(ホーユー株式会社 今井健仁)

演題④「油性ゲルの物性制御と化粧品への応用」
東京工科大学 応用生物学部 教授 柴田 雅史 先生

 一般的な油性ゲル化剤は、分子または微粒子が相互作用により三次元高次構造の網状オルガノゲルを形成することにより増粘する。しかし、化粧品分野においてはオイル中に析出したワックスなどの板状分子性結晶が互いにかみ合ってカードハウス構造をもつワックスゲルを形成して増粘、固化させたものが多数を占めている。これら2系統のゲルについて、物性、オイル種とゲル硬度の関係、塗布時の物性について紹介された。
さまざまなゲルの特性について、製剤としての物性値だけでなく微細構造の違いなど基礎的な部分まで深堀りして科学的に説明されているのが印象的であり、油性ゲルを扱う化粧品技術者だけでなく、一般の技術者にも通ずるものであった。
(ホーユー株式会社 今井 健仁)
演題⑤「化粧品用増粘剤の種類とアクリル酸系増粘剤の製剤安定化機構・レオロジー特性・乳化性能」
日本ルーブリゾール株式会社 堀越 俊雄 氏

 化粧品に用いられる増粘剤は、製品の安定化だけではなく、製品の使用感向上や外観の調整など、製品の印象に大きく影響を与える重要な役割を担っている。
本講演では、化粧品に長年幅広く使用されている架橋型ポリアクリル酸であるカルボマーおよびアルキル修飾した(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマーについて、それらの歴史、原料の特性から製品への展開、現在に至るまでの進化、そして、新たな価値創造の具体例までわかりやすくご説明いただいた。古い歴史をもつ架橋型アクリル酸系増粘剤であるが、現在も新しいグレードの開発やレオロジー調整機能を越えた付加価値の発見に挑戦されているということで、将来が非常に楽しみである。化粧品開発者にとって、すぐにでも処方へ展開したくなるようなヒントがたくさん含まれ、創造力膨らむ大変有益なご講演であった。
(ライオン株式会社 芳賀 理佳)
 
講演⑥「セルロースシングルナノファイバーを用いたボールペンインクの開発」
三菱鉛筆株式会社 横浜研究開発センター 中田 有亮 氏

 毎日何気なく使っているボールペン。その技術は日々進化を続けており、高い性能のボールペンが増えているが、それでも筆記性能や描線性能には潜在的な不満が存在しているとのこと。 本講演では、基本的なボールペンの種類と特徴、そして、ゲルインクの優位性と課題を説明していただいた後、インクボールペンにとって理想的なレオロジー特性をもつセルロースシングルナノファイバーを増粘剤に用いたボールペンの開発を様々な苦労話を交えながらお話しいただいた。両立することが難しく、さらにいくつもある条件を、鋭い着眼点と高い技術力で解決していることがよくわかった。
化粧品とは異分野であるものの、ゲルの技術を用いる商品開発として、化粧品の処方開発に大変参考になるご講演であった。
(ライオン株式会社 芳賀 理佳)
以 上
  • テーマを絞り様々な角度からアプローチした講演が聴ける
  • 講師の先生へ直接質問をすることができるのも魅力
  • 講師の先生と活発なディスカッションをする参加者
  • フリーディスカッション待ち時間の列が出来るほど盛況でした