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副腎皮質ホルモン [adrenocortical hormone]

副腎皮質が合成し、分泌するステロイドホルモンの総称.コルチコイド、コルチコステロイド、副腎皮質ステロイドともよぶ.副腎は左右の腎臓の上端に接して存在し、副腎髄質と外側の副腎皮質に大別される.副腎髄質からは副腎髄質ホルモンが、副腎皮質からは副腎皮質ホルモンがそれぞれ分泌される.副腎皮質は、さらに外側から球状層、束状層、網状層の3層に分けられ、球状層からミネラルコルチコイド、束状層からグルココルチコイド、網状層から副腎アンドロゲンが主としてそれぞれ分泌される.なお、女性では男性ホルモンの大部分が副腎由来である.
(1)グルココルチコイド糖
新生(糖をつくる)作用が強いことからその名がついたグルココルチコイドは、多用な生体への作用を示す.
①物質の代謝に対する作用:肝臓での糖新生を促進する.細胞内へのグルコース(ブドウ糖)輸送と細胞内でのグルコース利用を抑制して血糖値を上昇させる.タンパク質分解を促進し、合成を抑制してアミノ酸を増やす.トリグリセリドの分解を促進し、血中の遊離脂肪酸量を増加させる.
②抗炎症・抗アレルギー作用:炎症症状、アレルギー状態を緩解する(症状が軽くなる)作用があるが、これは比較的高い(薬理的)濃度での作用である.
③許容作用:カテコールアミンに対する血管平滑筋の感受性を増大させるなど、種々の代謝において反応が円滑に進むためにグルココルチコイドの存在が必要である.
④消化器に対する作用:胃液、胃酸、ペプシンの分泌を促し、粘液の分泌が低減する.これは胃粘膜の保護作用減退を意味し、ストレス性胃潰瘍の形成に関係する.
⑤ストレスに対応する作用:ストレス状態では、視床下部-下垂体-副腎皮質系が亢進し副腎皮質ホルモンの分泌が増加するが、ストレスの作用を緩解する生理的意義が考えられている.
⑥神経系への作用:欠乏や過剰によって、神経過敏、不安、幸福感、うつ状態、味覚・嗅覚の過敏が起こることが知られている.
コルチゾールは、ヒトにおける主要なグルココルチコイドで、下垂体前葉から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によって調節されており、このACTHの分泌は視床下部で分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)によってさらに調節されている.これが視床下部-下垂体-副腎皮質調節系である. コルチゾールは視床下部と下垂体前葉に対してネガティブフィードバック的に作用し、その適正レベルを維持するのに役立つ.血液中コルチゾール濃度は概日リズムを示し、早朝、最高レベルを示し、夜間には低値となる.ストレスは、視床下部-下垂体-副腎皮質系を亢進させ、CRH、ACTHの分泌増加を経て、血液中へのコルチゾール分泌が増加する.このことから、コルチゾールをストレスホルモンとよぶこともある.したがって、血液中のコルチゾール濃度や血液中に比べて低値であるが、検出可能な唾液中コルチゾールレベルを分析することによって、ストレスの評価が可能である.
(2)ミネラルコルチコイド
主として電解質代謝に関与する.おもなものはアルドステロンで、腎臓の糸球体近接細胞から分泌されるレニンからレニン-アンギオテンシ系を介して調節される.アルドステロンは、腎臓の遠位尿細管と集合管に作用してナトリウムイオン(Na+)再吸収を増大させ、カリウムイオン(K+)の排泄を促す.これによって、細胞外液量と循環血液量が調節される.また、1948年、副腎皮質ホルモンの一つであるコルチゾンが慢性関節リウマチを劇的に改善することが見出されて以来、副腎皮質ホルモンは抗炎症、抗アレルギー、免疫抑制の目的で盛んに使用されるようになっている.その間には、薬理作用が強く、代謝されにくい合成副腎皮質ホルモンも多種類合成され、使用されている.おもなものとしては、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメサゾン、ベタメタゾン、フルオシノロンアセトニドなどがある.(土屋徹)

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