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毛髪の摩擦 [friction of hair]

毛髪表面とくしなどの表面、もしくは毛髪表面どうしの間に生じる摩擦のこと.きしみ、引っかかりなどの官能用語で表現されることが多い.頭髪は洗髪時のような完全にぬれた状態から通常生活の乾燥した状態まで、さまざまな環境下におかれるため、さまざまな摩擦状態が想定される.一般に摩擦は、表面の清浄性や物質間の流体の存在によって、乾燥摩擦、境界摩擦、流体摩擦の3種類に分類される.毛髪の摩擦の場合、理論的には洗髪のみを行い、リンスを含めた化粧品の成分が毛髪表面に何も残存しない乾燥状態では乾燥摩擦が成立し、毛髪に化粧品が塗布された状態などでは、毛髪表面に微量の水分もしくは化粧品成分が薄く残存する境界摩擦が、さらに洗髪中などの完全湿潤状態では、流体摩擦に近い状態になると考えられる.しかしながら、毛髪表面に存在する脂質などのさまざまな影響により、多くの場合は境界摩擦が成立していることが多い.また、毛髪は外層のキューティクルが屋根がわら状に先端を毛先のほうに向け存在しているため、毛先に向かう順方向よりも根本に向かう逆方向のほうが、摩擦係数が高くなることも知られている.影響する要因毛髪の摩擦係数を決定する要因としては、毛髪自体の状態に起因するもの、ブラシのような毛髪に対する素材の特性、摩擦条件、摩擦に影響する成分の存在などさまざまあげられる.毛髪表面の損傷状態やくせ、ブラッシングの速度やかかる荷重、毛髪の方向性などが反映される.毛髪摩擦係数の測定法オイラーのベルトの理論(1762年にオイラーが考察した円筒上に巻きつけたロープの効用を示す理論.つぎの微分方程式からなり、その解はT1=T0emq(ここで、mは摩擦係数、qはロープの接触角)から得られる)を利用したプーリー法のレダー式摩擦試験機によって測定される方法と、摩擦感テスターによる測定方法がある.プーリー法では、1本の毛髪の両端に同じ大きさの荷重を加えて、アルミニウム製のプーリー(滑車)につり下げ、プーリーを一定速度で回転させることによって毛髪とプーリー間に生じる摩擦力を測定し、摩擦係数を算出する.この方法は毛髪の耐摩耗性の調査にも応用される.一方、摩擦感テスターの方法では、きれいに並べた数本の毛髪に対してある一定の荷重をかけた状態で、毛髪を荷重方向とは垂直になるように移動させるときに生じる摩擦力を測定し、摩擦係数を算出する.いずれの場合も、人が髪に触れるときに感じている毛髪の摩擦を再現するため、荷重条件などの摩擦条件を変化させることが必要である.(川副智行)

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