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アトピー性皮膚炎 [atopic dermatitis]

アトピー素因をもち、消退と再燃を繰り返すかゆみの強い湿疹で、乳幼児期に発症する場合が多く、かくことにより、掻破(そうは)痕が観察される.かゆみの客観的な評価は困難であるが、掻破行動の観察、ビジュアルアナログスケールを用いた数値化などにより診断される.乳幼児期には顔面、頭部、体幹に湿潤性の湿疹、小児期では肘窩・膝窩の苔癬化(たいせんか、肘や膝の裏の皮膚が分厚くなってごわごわになること)局面、大幹四肢皮膚の乾燥、思春期以後では全身各所に左右対称性の苔癬化局面の形成が認められる.近年、成人型アトピー性皮膚炎が増加する傾向がある. 診断基準 日本皮膚科学会が定めた“アトピー性皮膚炎の定義・診断基準”では、“アトピー性皮膚炎は、増悪を繰り返す、掻痒(そうよう)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ”とされ、次のような診断基準がある.
(1)掻痒(かゆみ)
(2)特徴的皮発疹と分布 ①皮疹は湿疹病変 急性病変:紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮 慢性病変:浸潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹.鱗屑、痂皮 ②分布 ・左右対側性 好発部位:前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹 ・参考となる年齢による特徴 乳児期:頭、顔に始まりしばしば体幹.四肢に下降 幼小児期:頸部、四肢屈曲部の病変 春期・成人期:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向.
(3)慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)乳児では2カ月以上、そのほかでは6カ月以上を慢性とする. 上記(1)、(2)および(3)の項目を満たすものを症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する.そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、経過を参考にして診断する. スキンケア 日本皮膚科学会が定めたアトピー性皮膚炎治療のガイドラインには皮膚機能の補正のために、皮膚の清潔と保湿に関するスキンケアが記されている.
(1)皮膚の清潔 ①毎日の入浴、シャワー ②汗や汚れはすみやかに落とす ③石けん・シャンプーを使用するときは洗浄力の強いものは避ける ④石けんは残らないように十分にすすぐ ⑤強くこすらない ⑥かゆみを生じるほどの高い温度の湯は避ける ⑦入浴後にほてりを感じさせる沐浴剤・入浴剤は避ける ⑧患者あるいは保護者には皮膚の状態に応じた洗い方を指導する ⑨入浴後には、必要に応じて適切な外用剤を塗布する
(2)皮膚の保湿 ①保湿剤は皮膚の乾燥防止に有用である②入浴・シャワー後は必要に応じて保湿剤を塗布する ③患者ごとに使用感のよい保湿剤を選択する ④軽微な皮膚炎は保湿剤のみで改善することがある
(3)その他①室内を清潔にし、適温・適湿を保つ ②新しい肌着は使用前に水洗いする ③洗剤はできれば界面活性剤の含有量の少ないものを使用する ④爪を短く切り、掻破による皮膚の傷害を避ける(市川秀之)

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