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サーモトロピック液晶 [thermotropic liquid crystal]

物質に、熱をかけていくと温度の上昇に伴い、固体(結晶)→液晶→液体へと変化する液晶状態のこと.すなわち温度を制御することにより液晶を生成させる.サーモトロピック液晶は、分子形状とそれに基づく分子の三次元的な配列パターンにより次のタイプに分類される.
(1)棒状分子の液晶
液晶を形成する化合物の多くは棒状の分子で、分子の並び方の違いにより、スメクチック(S)相とネマチック(N)相とに大別される(図1).スメクチック液晶では、分子配列における方向の規則性と高さ方向の位置の規則性が維持されており、層状の構造をとる.分子の長軸(長さ方向)が層の面に垂直に並んでいるスメクチックA(SA)と、分子長軸が層面に対して傾いているスメクチックC(SC)などがある.ネマチック液晶は分子配列の方向の規則性のみ有し、位置の規則性は失われている.またネマチック液晶には、分子配列の方向が徐々にねじれ、らせんの層状構造となるキラルネマチック液晶がある.このとき、層内の分子の並び方はネマチック液晶の特徴である方向の秩序のみが維持されている.キラルネマチック液晶はコレステロールの誘導体に多く見られたので、コレステリック液晶ともよばれている(図2).コレステリック(Ch)液晶のらせんのピッチは可視光の波長と同程度のものが多く、さまざまな干渉色を呈する.
(2)円盤状分子の液晶
円盤状分子も棒状分子と同様液晶状態となることが確認されている.円盤状分子が形成するディスコチック液晶には、分子が積み重なって円柱(カラム)を形成しているディスコチックカラムナー(D)相と、柱状構造が失われて円盤の配向秩序のみが維持されているディスコチックネマチック(ND)相がある.(鈴木敏幸)

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