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タラソテラピー [thalassotherapie]

ギリシャ語の海(Thalassa)という言葉と、治療(Therapies)という言葉を語源とした造語で、1869年にフランス人医師ボナルディエールによって初めて使われた.もともとフランスのブルターニュ地方で発達した疾病治療あるいは美容行為で、海を中心とした環境や、海を起源とした物質を組み合わせてリラクセーション効果を兼ね備えている.フランス医学アカデミーによって“タラソテラピーとは海洋性気候の作用の中で、治療の目的で海水、海藻、海泥を用いて行う治療”と定義されている.日本語では一般に海洋療法と訳され紹介されている.その臨床効果は古くから認知されているにもかかわらず、その有効成分、あるいは作用機序についてはまだ十分に研究されていない.タラソテラピーに用いられる素材の多くは豊富なミネラルを含んでおり、これらの組成はヒトの血液あるいは体液のミネラル組成と類似している.とくにマグネシウムが豊富に含まれていることが特徴である.また、用いられる海藻の多くは干満の差の激しい海岸に生息するもので、これらは潮の満ち引きによる水分環境の変化や潮流、あるいは強い紫外線などに対して適応し生存するための機能を備えている.そのため、海藻抽出物には高い細胞賦活作用を有するものや、抗酸化作用を有するものが数多くみられる.タラソテラピーによる治療効果には、からだへの直接的な作用のみならず、精神的なストレス解消によるもの、あるいは海水の中では関節にかかる力が軽減することによるリハビリテーション効果などもある.とくに近年は精神面での効果が注目されており、実際に気管支疾患(喘息や気管支炎)、皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など)、慢性炎症性疾患(リウマチなど)に対して有効であることが臨床的に報告されている.(岡野由利)

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