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D相乳化 [D-phase emulsification]

D相ともよばれる界面活性剤相を利用した乳化法.D相中に分散相の油を分散保持させてo/D型エマルションを生成させ、これを水で希釈して水中油(o/w)型エマルションを得る.通常、酸化エチレン(EO)型非イオン性界面活性剤/油/水の3成分系の場合、温度が曇点*付近になると、界面活性剤の会合数が著しく増えて、水相や油相のほか、多量の水、油、界面活性剤を含むD相が出現して系は3相系となる.D相と油相、水相との界面張力は低く、効率のよい乳化が行われる.D相乳化では、温度を調整してD相を得るのではなく、1 ,3−ブタンジオールのような水溶性の多価アルコールにより非イオン性界面活性剤HLB値を調整してD相を形成させ、これを乳化に利用する.相平衡図を用いて乳化過程の組成および状態変化を見ると、乳化は界面活性剤/水/多価アルコールからなるD相からスタートして、矢印に沿って進行する(図).等方性界面活性剤溶液の領域を越えて油相が添加されると、系は白濁してくる.相図上にはD相と油相を分ける臨界点P2のみが存在するため、この領域は油とD相とからなる2相領域であり、o/D型エマルションが生成する.油の組成比が70 wt%を超えると系は透明ゲル状のo/D型エマルション(斜線部の領域)になる.このゲルの形成が微細なエマルション生成のポイントとなる.微細なエマルションを得るには界面張力を十充分低くすることが必要であるが、連続相を界面活性剤会合数の増加したD相とすることにより、油滴との界面張力を連続的に変化させることができる.安定なゲルエマルションが形成される適度な範囲は0.5〜2.0 dyn/cmである.D相乳化法を用いると界面活性剤のHLB値の調製をあまり必要としないという利点がある.(鈴木敏幸)

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