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二次付着 [secondary adhesion]

肌に塗布したファンデーションをハンカチや衣類に付着した場合、口紅がカップや衣類などに付着した場合、マスカラを塗布したまつ毛がまばたきすると肌に付着したりする場合などをさしていう.色移り、転写などともいう.色材を配合した製品は、色材がもともと肌、唇上に固定されているものではないため、何かに接触したり、手でこすったりすればすぐに取れてしまう.二次付着によって化粧もちが悪くなったり、化粧くずれが起きたりするため、頻繁に化粧直しをしなくてはいけなくなる.また、衣類に付着すると落としづらいなどの問題があり、多くの女性の悩みとなっている.このような背景から“二次付着しない”または“しにくい”いわゆる二次付着レス製品が開発され、種々のアイテムにおいて発売されるようになった.
二次付着レスの機構
一般的な方法としては、シリコーン系の樹脂が配合されている場合が多い.肌に塗布すると樹脂中に含まれる揮発性油分が徐々に揮散してシリコーン樹脂が膜を形成する.このような原料を製品に配合することにより肌に顔料を無理なく固定することができるため、二次付着しない、しにくい製品ができる.ただし、たんに樹脂を配合してもべたついたり、膜を形成しなかったり、膜を形成してもパリパリ、ごわごわの硬い膜になったり、使用性が悪かったりといった問題もある.そのため場合によっては、原料を一から開発する必要が生じてくる.化粧品に使用できる原料としては、第一に安全で、安定であることなど種々の制約があり、このような高い機能性のある製品の原料開発といえども、これらの制約をクリアしなくてはいけない.
二次付着レス
口紅落ちない、カップにつきにくい、化粧もちがよいという口紅の製品化が技術的に可能となった時期と女性の社会進出とがマッチして、かつてない売上を計上した.
(1)シリコーン系樹脂の応用
初期のころのタイプは、口紅に揮発性の油分とシリコーン樹脂を加え、疎水化した超微粒子シリカ粉末を配合することにより、唇上で皮膜を形成し、カップなどにつかなくなるものであった(図).二次付着機能はほかのタイプとは比較にならないほど優れていたものの、つややうるおいという点において若干劣っていたため、さまざまな試みがなされてきている.より柔軟な膜を形成する非水系エマルション樹脂(アクリル-シリコーン共重合体)の応用や、色材と親和性がないため塗付表面にしみ出してくる性質をもつフッ素変性シリコーンとの組み合わせなどがその例である.
(2)高分子アルギン酸の応用
歯科医師が使用している歯型取り剤、歯科印象剤に着目し、シリコーン樹脂を使用しないものを開発した例もある.この歯科印象剤は、水と適当量を混ぜることによってペースト状になるという性質をもち、その原理を口紅に応用したもので、被膜形成速度を速めるために水分を含みやすい油分を配合し、唇に塗布したときに唇の水分を利用して被膜を形成させているのである.この原料成分にはアルギン酸(とくに分子量が10〜22万の高分子アルギン酸)が用いられており、ナトリウム塩に置換したアルギン酸ナトリウムは、化粧品、食品をはじめ医薬品分野で利用されてきている.
(3)ポリエーテル変性シリコーンの応用
高分子アルギン酸の応用と同じく、唇の水分に着目したほかの方法として、水分と混ざると粘度が増大し、唇にぴたっとフィットする性質をもつポリエーテル変性シリコーンの応用があげられる.(南孝司)

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