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イリス油 [irris oil]

オリス油ともよばれる.アヤメ科のイリス(Iris germanica Lam.、 I. florentina L.、 I. pallida L.)などの根茎を収穫後剥皮し、天日乾燥後2〜3年間貯蔵させた後、溶剤抽出法または水蒸気蒸留法によって得られる精油のこと.水蒸気蒸留して得られるイリス油はほかの天然精油と異なって常温で固体の物質であり、そのためイリスコンクリートとよばれる.溶剤抽出法のイリスレジノイドは採油率がよいが、香気については水蒸気蒸留法によるイリスコンクリートより劣っている.このコンクリートよりアルカリを用いてミリスチン酸を取り除いたものをイリスアブソリュートといい、もっとも高価な香料素材の一つである.その香気成分のイロンは、バイオレット調の香りを表現する上で非常に重要で、イリス油は、“シャネルN°19”(シャネル社)をはじめ名香として知られる香水には欠かせない素材として使用されている.しかし、フレグランス以外の製品に使われる調合香料としては、現在、バイオレット調の香りを表現するさいには兼価なヨノン、メチルヨノン類が一般に広く使用されるようになり、イリス油自体の使用量は減少している.(大森祥弘)

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