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緩衝能 [buffer capacity、 buffering capacity]

緩衝作用の強さのこと.その程度を緩衝価で表す.緩衝作用とは、酸または塩基を添加、あるいは除去したときに、pH(水素イオン濃度)の変化を軽減する作用のことである.細胞内外の水素イオン濃度は、きわめて一定に保たれている.たとえば、血液のpHは通常7.40程度であり、7.35〜7.45の狭い範囲内で変動を示す.この血液の緩衝システムのおもなものとして、重炭酸緩衝系、リン酸緩衝系、血漿タンパク緩衝系、ヘモグロビン緩衝系がある.また、健康な皮膚は、通常、弱酸性であることが知られており、これは皮膚の緩衝作用による.なお、皮膚の緩衝能を皮膚の中和能ともよぶ.ある濃度以下の酸性またはアルカリ溶液を皮膚表面に接触させると一過性に皮膚pH値が変動するが、一定時間後には前値に復元する.このように、皮膚には皮膚のpHを一定に保持する作用があり、こうした中和反応に要する時間を中和能または緩衝能の指標とする.中和能の測定には、弱アルカリ溶液を滴下してpHを間欠的に測定する方法と、弱アルカリ溶液とフェノルフタレインアルコール溶液を同時に滴下して、フェノールフタレインの赤色が褐色するまでの時間を測定する方法がある.なお、中和は、酸と塩基の反応を意味することが多いが、正電荷をもつ物質やイオンと負電荷をもつ物質やイオンの反応、毒性や酵素活性などをもつ抗原に対し、抗体を用いて無毒化するといったことを意味する場合もある.(土屋徹)

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