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基底層 [stratum basal、 basal layer]

ケラチノサイト(表皮角化細胞)の最下層に位置する細胞層で基底膜に接している.ケラチノサイトの母細胞層であり、1層の円柱状の基底細胞からなっている.核は小型の楕円形をしており、クロマチンを多く含んでいる.細胞質は直径7〜8 nmのケラチン線維*に富んでおり、これらの線維が基底細胞の骨格形成に重要な働きをしている.基底層の細胞がほかの表皮の細胞と大きく異なる点は、細胞の分裂を行っている点である.基底細胞の一部はDNA合成を行い、有糸分裂して娘細胞となり、上方へ移動して有棘(ゆうきょく)層*を形成していく.ほかの基底細胞は幹細胞として細胞周期を維持しており、細胞周期は約450時間である.隣接した基底細胞どうしは、デスモソームや裂隙接合(ギャップジャンクション)という接着分子によって、細胞どうしの結合を保っている.また、基底膜との結合には、ヘミデスモソームという接着構造が用いられている.これらの接着分子は固定したものではなく、出現や消失を繰り返して細胞の可動性を保つことで、分裂した細胞が上層に移動することが可能となっている.また、基底層における細胞の約1割をメラノサイトが占めているが、基底細胞はメラノサイトが産生したメラニン顆粒を受け取る.基底細胞が受け取ったメラニン顆粒は、基底細胞内で核上方の細胞質に移行して、核の上にまるで黒い帽子をかぶせたような核上帽(メラニンキャップ)を形成する.この核上帽は増殖能をもつ基底細胞の核を、紫外線から保護する役割をもっていると考えられている.(片桐千華)

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