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一次汚染 [primary contamination]

工場での製造に由来する微生物汚染.一次汚染はおもに製造工場内で発生し、原料や製造設備、製造環境ならびに作業者を介した微生物の混入が原因である.したがって、一次汚染防止策の基本は、微生物混入の発生源に応じた微生物制御(殺滅)を行い、製造工程への微生物の混入を防止することである.微生物の殺菌や滅菌法には次のようなものがある.・加熱殺菌:高圧蒸気法(高圧殺菌)、乾熱法(高温殺菌)・照射殺菌:紫外線・ガス殺菌:EO(エチレンオキシド)・濾過滅菌:メンブレンフィルター、濾紙・化学的殺菌:殺菌剤、酸、アルカリ滅菌、殺菌法を選択する上で重要なことは、事前に対象物(原料や製造設備など)のバイオバーデン(微生物の種類と量)を把握することである.殺菌方法は、ある微生物Aには有効でもBには効果がないというものもあり、適切な方法を選択しなかった場合、化学的、物理的な耐性(抵抗性)を獲得した微生物をつくり出してしまう.そしてさらには、それが原因となって新たな汚染を引き起こすことにもなりかねない.また、殺菌、滅菌前には、設備の汚れなどを十分洗浄しておく必要がある.(1)原料原料については、微生物を一定数以上に増やさない管理を行うことが大切である.これは微生物自体を殺菌、滅菌できても、微生物がつくり出した毒素や酵素が残る場合があり、これらが内容成分の変質や使用者の健康被害を引き起こすことがあるからである.原料別に見てみると、水(イオン交換水)などの液体原料には、加熱殺菌や濾過滅菌の方法が用いられ、紫外線などの透過性がある場合は照射殺菌も有効である.また、粉末原料の場合はガス殺菌や乾熱滅菌が用いられる.(2)製造設備製造設備では、工程内外を洗浄する水由来のグラム陰性桿菌や、工場内に浮遊している芽胞形成菌、かび胞子あるいはヒトの皮膚常在菌など多種の微生物が対象となる.したがって、条件の異なる数種の殺菌方法が併用される.たとえば複数の薬液使用による化学的殺菌(殺菌剤や酸、アルカリ)や化学的殺菌と加熱殺菌の併用などである.なお、化学的殺菌において注意すべき点は、処理後の設備内に薬液が残ると、薬液に対する耐性(抵抗性)を微生物に獲得されてしまうことである.この防止策として、十分な薬液の洗浄・すすぎやほかの殺菌法への切り替え、殺菌法の併用といった工夫が行われる.(3)製造環境おもに工場内に浮遊している芽胞形成菌やかび胞子、あるいはヒトの皮膚常在菌が対象となる.紫外線などによる照射殺菌や空調機のバイオフィルターによる除菌が一般的である.(4)作業者おもに皮膚常在菌が対象となるため、アルコール消毒や逆性石けんでの手指洗浄・消毒が行われている.また、無塵衣の着用やエアシャワーによる、衣服の付着浮遊菌や塵埃などの除去も行われる.(中島靖夫、山戸直弥)

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