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皮膚免疫 [skin immune system]

人体の表面を被う皮膚は、微生物の感染を防ぎ抗原を排除する機能を有し、外部環境から生体を保護するための重要な免疫器官である.外部からの異物の侵入は、角層により阻止されているが、細菌などの病原微生物や化学物質が傷ついた部位やバリア機能が低下した部位から侵入した場合、皮膚は免疫学的防御機能を発揮し、からだを守る重要な働きをしている.皮膚における免疫監視細胞として重要な働きをしているのが抗原提示機能を有するランゲルハンス細胞である.ランゲルハンス細胞は、表皮で樹状突起をアンテナのように広げて外部より侵入したアレルギー物質を認識した後、表皮からリンパ節に移動し、Tリンパ球に情報を伝達する.ランゲルハンス細胞に認識されたアレルギー物質に対する特異的なTリンパ球が分化・増殖した後に、それらアレルギー物質が再度表皮に侵入した場合には、ランゲルハンス細胞からTリンパ球に情報が伝達され、Tリンパ球は炎症性サイトカインを放出し、皮膚に炎症反応が引き起こされる.ランゲルハンス細胞の抗原提示機能は、UVB(→紫外線)の照射により低下することが明らかとなっている.このように皮膚には、からだを感染などから防御する働きをもっているが、非自己の物質に対して応答するという免疫学的基本法則に基づき、抗原やアレルギー性を示す化学物質(ハプテン)を排除するため、アレルギー性接触皮膚炎に代表される炎症が発現する.また、表皮の大部分を占めるケラチノサイト(表皮角化細胞)も、インターロイキン(IL)-1*、 IL-6およびIL-8をはじめとする炎症反応の発現に関与する種々のサイトカインやケモカインを産生する.なお、皮膚の免疫機能は神経系や内分泌系からの影響も受けている.(市川秀之)

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