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可溶化 [solubilization]

溶媒に溶解しない物質を透明かつ均一に溶解させること.可溶化に用いる素材を可溶化剤という.一般に界面活性剤が可溶化剤として用いられるが、ミセルが形成される濃度(cmc)以下では可溶化は行われず、難溶性の物質は分離して存在する.cmc以上になるとそれがミセル中に取り込まれて溶解し始める.すなわち可溶化の状態は会合コロイドであり、熱力学的に安定な系である.水に溶けにくい物質の可溶化には、ミセルを形成する親水性の界面活性剤が用いられ、また水溶液を油に可溶化するためには、逆ミセルを形成する親油性の界面活性剤が用いられる.可溶化量は界面活性剤の量のほか、その親水性-親油性バランス(HLB)に大きく依存する.図1は、非イオン性界面活性剤水溶液中への油(ヘキサデカン)可溶化量の温度依存性を示したものである.可溶化限界曲線と曇点*曲線で囲まれた領域Iで可溶化系が得られる.酸化エチレン(EO)付加型の非イオン性界面活性剤は、温度の上昇に伴いその性質が親水性から親油性へと変化していくが、曇点近傍の親水性と親油性がバランスして界面活性剤会合数が増加した領域において可溶化量は最大となる.また、同程度のHLBをもつ界面活性剤の場合、親水基と親油基が大きく、それぞれの性質が強いほど可溶化量が多くなる.親水性と親油性のバランスは温度調整のほか、界面活性剤分子と共存しうる両親媒性の分子の添加によっても調整できる.化粧品における可溶化系の代表例は、透明の化粧水やエッセンスであり、香料やエモリエントとしての油剤が、水あるいはエタノールや多価アルコール(グリセリンや1、3-ブタンジオールのように複数のヒドロキシル基を有するアルコール)水溶液中に可溶化されている.香料はエステル、アルデヒド、ケトン、アルコール、エーテル、フェノール、ラクトンといった有機化合物で、極性は高いが一般に油溶性である.そのため、水性ベースの化粧料を賦香する場合、可溶化が必要となる.通常、親水性の高いEOあるいは酸化プロピレン(PO)付加型非イオン性界面活性剤が可溶化剤として0.5〜2%ぐらい用いられるが、香料の極性と界面活性剤のHLBとの間に相関関係がある.極性の高い香料はEO付加モル数の高い界面活性剤に、極性の低い香料はEO付加モル数の小さな界面活性剤に可溶化されやすい.エタノールや多価アルコールなどの水溶性溶剤は界面活性剤のHLBを変化させるため、香料や油剤の可溶化に大きく影響を及ぼす.図2は、化粧品用香料として広く用いられているベンジルアセテート可溶化量に対する多価アルコールの添加効果を示している.ベンジルアセテートは多価アルコール中にもある程度溶解するため、界面活性剤をまったく含まない場合でもある程度溶解する(図中の黒く塗りつぶした点).1、3-ブタンジオールやプロピレングリコールなどのように曇点を上昇させる(すなわち界面活性剤の親水性を高める)性質をもつ成分を添加した界面活性剤水溶液では、この多価アルコール自身の溶解量を差し引いたとしても可溶化量が増加する.これとは反対に、曇点を低下させる水溶性成分(グリセリンやソルビトール)の添加により可溶化能は低下する.また、被可溶化物質が非極性の炭化水素の場合、ベンジルアセテートの場合とは逆に、界面活性剤の曇点を低下させる成分の添加により、可溶化量は増加し、曇点を上昇させる成分(グリコール類)の添加により可溶化量は低下する.(鈴木敏幸)

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