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金属 [metal]

化粧品容器に金属が使用されたのは、昭和20年ごろといわれている.初期に使用された金属は鉄や黄銅が中心であったが、最近ではアルミニウムやステンレスが使われている.
(1)黄銅(真ちゅう)
銅と亜鉛の合金(七三黄銅:亜鉛30%、四六黄銅:亜鉛40%が一般的)で、加工性がよく、適度な硬度をもつ素材.プレス加工に向いている.単体では腐食、変色などが起こりやすいため通常は表面処理として、めっき、磨き塗装などを行う.用途は口紅容器の部品、金属コンパクトなどに使われている.特殊なものとして丹銅(黄銅の一種で亜鉛3〜22%)があり、赤みのある金色が出せる材料として利用されている.
(2)アルミニウム
素材が軟らかく絞り加工、インパクトプレス加工ができるので多く利用されている.通常合金アルミニウム(マグネシウム0.2〜0.6%)が使われている.内容物などと触れる場合は耐腐食性などを確認する必要がある.アルミニウムはいろいろな表面処理が可能で、とくに耐腐食性の向上と着色を兼ねたアルマイト染色加工が多く利用されている.口紅容器、コンパクト容器、ファンデーション用中皿などに使われている.
(3)ステンレス
鉄、ニッケル、クロムを主体とした合金でクロム18%、ニッケル8%のものが18-8ステンレス鋼とよばれ広く使用されている.薄くて硬度があり腐食しにくいので磨きのままで使用することが多い.反面、その硬さのため加工性にやや劣る.
(4)鉄
単体では腐食が起こりやすいため、通常めっきなどの表面処理を施して使用する.ユニクロムめっきしたものを中皿などに使用することもある.鉄板にスズ(錫)をめっきしたものにブリキがあり、エアゾール缶などに使用される.
成形
金属の成形法には主としてプレス成形とインパクトエクストルージョンプレス成形がある.
(1)プレス成形
プレスにより金属板材を変形させて成形する方法を総じていう.一般に金属は応力を加えていくと変形するが、ある一定以上の応力を加えるとひずみが消えない永久変形に至る.これを利用して金属材料を目的の形状に成形する.基本的なプレス成形の工程としては、せん断加工、曲げ加工、絞り加工、しごき加工である.そのほかに、ひも状の隆起あるいはくぼみをつけるビーディング、円筒材料の一部を膨らませるバルジング、円筒材料の端の径を小さくするネッキング、材料の端を曲げてフランジをつけるフランジング、材料の端を丸めるカーリングなど、必要とする形状に応じた加工方法がある.複雑な形状を得るためにはいくつもの工程を経て最終形状に至るわけである.化粧品容器で金属が用いられているものとしては口紅、コンパクト容器、マスカラ類の容器、ファンデーションの中皿などがあげられるが、これらはすべてプレス成形である.
(2)インパクトエクストルージョンプレス成形
略してインパクトプレスともいわれ、アルミニウム、亜鉛のような展性のよい金属のみに適用できる成形法である.成形方法としては、材料のスラグを金型穴内に挿入し、前進するパンチでスラグを衝撃的にプレスすることで、金型の押出し口、またはパンチと金型の隙間から材料を押し出し、薄肉中空断面の形状の製品をつくる(図).工程が1回のプレスのみなので簡便である.この方法で、アルミニウム製のエアゾール缶やチューブが得られる.(佐藤達夫)

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