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くすみ [skin dullness、 somberness]

“くすみ”は肌状態を表す用語として広く認知されており、女性の肌悩みのなかでも上位を占め、20歳代後半〜40歳代で増加することから、加齢による影響も考えられている.現象が非常に複雑で定義が難しく、化粧品業界内でも統一的な認識がもたれていなかったが、1995年に日本化粧品工業連合会から各社の意見を参考にくすみの定義案が提出された.その定義案は、“肌のくすみは、ある特定の現象である.顔全体または眼のまわりや頬などの部位に生じ、肌の赤みが減少して黄みが増し、また肌の‘つや’や透明感が減少したり、皮膚表面の凹凸などによる影によって明度が低下して暗く見える状態で、境界は不明瞭である.その発生要因はいくつか考えられており、それらの要因が単独か複数関与することにより、現象として認識される.①血行不良による肌色の赤みの低下、②び漫的なメラニンの沈着、③皮膚の弾力が低下することにより生ずる皮膚表面の凹凸による影、④角層の肥厚などによる透明性(光透過性)の低下、⑤皮膚表面での乱反射によるつやの低下、⑥加齢に伴う皮膚の黄色化、である.なお、このほか、ほこり、汗、皮脂などの汚れにも関与して視覚的にくすんで見えるが、それらはたんなる物理的な要因であり、洗い流せば消失するので他の要因とは異なる”とある.要因この定義にあるようにくすみは、複合的な要因により引き起こされていると考えられ、くすみを感じるときの肌状態について、女性を対象としたアンケート結果から、血色の悪いとき、肌のはりが感じられないとき、肌のつやがなくなったとき、肌のきめが粗く見えたときなど、複数があげられた.実際の肌の計測結果において、メラニンと血流それぞれに由来するもの、両方に起因するものがあり、その両者をあわせると原因の82%にもなり、落屑*(らくせつ)などの角層の表面状態によるもの、毛穴やきめなどの肌表面の形状に由来するものなどは、それぞれ9%であった.さらに、季節変化による冬季、さらに性周期による卵胞期の環境温度変化あるいは体温の低下によるものや、加齢によるもの、一時的な疲労や睡眠不足によるものが報告され、くすみは複合的な要因が考えられることが測定結果からも裏づけられている.定義案の個々の要因について、解析した結果から以下のことが明らかにされている.
(1)血行不良による肌色の赤みの低下
肌色を決定するものとして、血中のヘモグロビンがあげられる.血行不良により還元型ヘモグロビンが増加し、その結果赤色領域の吸収が増え、赤みの反射率が低下する.血流とくすみの視観判定値とは相関性があり、さらにマッサージにより血行を促進すると、くすみが改善されることからも、ヘモグロビンはおもな要因の一つとして考えられている.
(2)び漫的なメラニンの沈着
肌色を決定しているもう一つの要因として、角層から基底層にかけて多量に分布しているメラニンがある.メラニンは褐色を呈するためにくすみの印象を強める要素として、肌の色の黄みが強くなること、暗くなることに関与していると考えられる.また、関係要素として、皮膚色の不均一性があり、この“色むらがある”印象がくすみに関与し、さらに加齢によるものが、40歳代以降にくすみを感じる人が多いというアンケートの結果と関連していると考えられている.
(3)形態との関係
皮膚表面の微小凹凸とくすみにおいて相関性がある.すなわち、皮膚表面の凹凸の大きさを表す平均粗さと、皮溝やしわなどの溝の間隔を表す平均谷間隔の変動係数は加齢と相関性があり、とくに平均谷間隔の変動係数についてはくすみの印象度と有意な相関が認められている.これは、加齢によりきめが乱れ、皮膚表面の凹凸による陰影の差が不均一になったために、視覚的なくすみが生じたと考えられる.また、皮膚表面の微細な凹凸は、視観による肌のつやや透明感などとの相関が考えられ、肌の光沢や透明性がくすんだ肌では低下する傾向があり、また加齢によっても同様の現象が見られることが報告されている.(真柄綱夫)

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