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薫香(くんこう) [incense]

焚く芳香製品のこと.素材としては、ミルラ*(没薬)、オリバナム(乳香)、ベンゾイン(安息香)、サンダル(白檀)、イリス*根、シナモン(肉桂)とムスク(麝香鹿)などが使われる.香水香料、香りの意味で幅広く使われているperfume(パーフューム)の語源は、ラテン語のper fumumで“煙を通して”という意味である.人間と香りの出会いが、物が燃えたときの匂いからということがよくわかる.古代文明では、神殿で香が焚かれ、悪鬼悪霊や邪心を払い、病を癒そうと、薫香が宗教的に使われていた.燃焼によって香りは広範囲に広がり、荘厳な雰囲気を醸し出すのである.日本における薫香とは、お香のことである.その形態には大きく分けて、香木、練香、線香と香粉がある.香木は沈香(伽羅)やサンダルなどを細かく割って、均等に刻んだものであり、練香は香木やそのほかの素材を粉末状にし、はちみつや梅肉で練り、炭の粉末を加えて、丸めたものである(→練り香水).香木や練香は香炉で焚く.線香は各種の香木やそのほかの素材の粉末状にタブ粉(タブノキの樹皮の粉末)を混ぜて水分を加え、練り上げて細長い棒状にした後、乾燥させる.使うときは先端に火をつける.これらと異なり、香粉は焚くことを前提にしていない.素材はミルラ、オリバナム、ベンゾイン、サンダル、イリス根、シナモン、バラやラベンダーの花、バニラ豆、トンカ豆などを粉末状にしたものやバニリン、クマリンや合成ムスクなどの粉末状の合成香料で、通常紙や布製の袋に入れられる.いわゆる匂い袋で、最近では、デキストリンやシリカなどの粉体に香料を添加して袋に入れたものが市場で見受けられる.匂い袋の楽しみ方は香水と同様で、衣服のポケットや肌着との間に入れたり、和服のたもとに忍ばせたり、たんすに入れて衣類に香りを移らせたり、といった目的で使用する.また、室内や自動車の車内の芳香剤としても使われる.(浅越亨)

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