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コラーゲン [collagen]

動物の結合組織を構成している主要なタンパク質で、全タンパク質の約25%にあたる.皮膚では、表皮真皮接合部*の基底膜真皮に存在し、真皮ではその70%以上を占めている.以前は組織を支持構築する構造タンパク質であると考えられていたが、現在では、細胞の正常な機能を発揮するのに重要な働きをし、具体的には細胞の代謝、形態、増殖、分化、移動などのさまざまな活動に影響を与えることが明らかにされている.コラーゲンスーパーファミリーコラーゲンは、多数の分子種からなるスーパーファミリーを構成しており、I型、II型のようにローマ字で名前をつけている.コラーゲンは3本のコラーゲンポリペプチド鎖(α鎖とよぶ)からなるが、3本とも同じアミノ酸配列、つまり同一遺伝子からなるものもあれば、そのうち2本が異なるもの、3本とも異なるものなどが知られている.一方、IV型コラーゲンのようにペプチド鎖の種類として6種類存在することが明らかにされているものもある.コラーゲンは、コラーゲン分子が重合する機構や重合した後の形状から、線維束形成型グループ(I型、II型、III型、V型およびXI型コラーゲン)、シート形成型グループ(IV型、VIII型およびX型コラーゲン)、係留線維束形成型グループ(VII型コラーゲン)、FACIT型グループ(IX型、XII型およびXIV型コラーゲン)、ビーズ状線維形成型グループ(VI型コラーゲン)などに分けられる.なかでも線維束形成型グループのコラーゲンは、ほかのグループよりも生体組織に占める割合が高い.真皮中のコラーゲンのうちI型コラーゲンは約80%、III型コラーゲンは約15%を占め、V型コラーゲンは、I型およびIII型コラーゲンとハイブリッドをつくることにより細いコラーゲン線維を形成する.また、シート形成型グループのIV型コラーゲンは、網目構造をつくり、基底膜では主要な構造を構築している.係留線維束形成型グループのVII型コラーゲンは二量体が重合して線維を形成し、基底膜と真皮の結合に関与している.FACIT型グループのIX型、XII型およびXIV型コラーゲンは線維束形成型グループのコラーゲン線維の表面に相互作用し、コラーゲン線維どうし、またはコラーゲン線維とほかの細胞外マトリックスの結合に関与しているのではないかと考えられている.
アミノ酸配列と三本鎖らせん構造
コラーゲンのアミノ酸配列の特徴は、Gly−X−Yの繰り返し配列をもつことである.ちなみにGlyはグリシンを示し、XとYはどのアミノ酸でもよいが30%程度がプロリンや水酸化プロリンなどのイミノ酸が占める.この配列ゆえにα鎖は、3残基で330°回転するような左巻きのらせん構造を形成する.そして、3本のα鎖がそれぞれ左巻きのらせん構造を形成し、互いに緩く右巻きの超らせん構造をとることによりコラーゲン分子が形成される.
生合成とコラーゲン線維の形成
おもに真皮中の線維芽細胞により産生されるが、基底膜に存在するIV型コラーゲンのようにケラチノサイト(表皮角化細胞)と線維芽細胞の両方によって産生されるものもある.細胞のリボソームでコラーゲンmRNAから合成されたプロα鎖は、小胞体中でプロリン残基とリジン残基の特定のものが酵素によりヒドロキシル化されて、ヒドロキシプロリンとヒドロキシリジンになり、一部糖鎖が結合される.そして、3本のプロα鎖が水素結合により自己会合してプロコラーゲンとよばれる三本鎖らせん構造を形成した後、ゴルジ装置を経て、細胞外へ分泌される.さらに、プロコラーゲンC末端プロテアーゼとプロコラーゲンN末端プロテアーゼという特異的プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)により、C末端プロペプチドとN末端プロペプチドが切断除去されると同時に、コラーゲン分子どうしが重合して直径10〜300 nmの細線維を形成する.このとき、各コラーゲン分子は配向軸方向に分子の長さの4分の1(67 nm)ずつずれながら重合するために、コラーゲン細線維を電子顕微鏡で観察すると67 nmごとに特徴的な明暗の縞模様が認められる.なお、コラーゲン細線維と細線維が会合してコラーゲン線維(直径数μm)となり、生体内では多数のコラーゲン線維が縦横無尽に配向したり、あるいは束化した線維会合体として存在して機能している(図).
分解
コラーゲンは通常のプロテアーゼによっては切断されないが、コラゲナーゼ、あるいはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とよばれる酵素群により分解される.これらの酵素は線維芽細胞、ケラチノサイトあるいは好中球などにより産生される.また、I型コラーゲンを熱変性させるとゼラチンとなり、コラーゲン特有の三本鎖らせん構造はランダムになるが、この状態では通常のプロテアーゼによる分解を受けることになる.紫外線照射によるMMPの発現亢進によりコラーゲン分解後の修復が不十分であること、あるいはコラーゲンの合成と分解のバランスが分解側へずれるために、コラーゲン量が減少することがしわの形成に関与すると考えられている.(圷信子)

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