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紫外線防御 [UV(ultraviolet)protection]

紫外線(UV)から皮膚を保護する方法として、帽子や長袖の衣類を着用したり、日傘を差したりすることは有効な手段であるが、UVケア化粧品(紫外線防御用化粧品)を用いることにより有効に紫外線を防御することができる.こうした化粧品には、紫外線防御機能を効率よく得るために紫外線防御剤が配合されている.UVケア化粧品の容器あるいはパッケージには、紫外線防御効果の指標として紫外線UVBの防止レベルであるSPF(sun protection factor)、紫外線UVAの防止レベルであるPA(protection grade of UVA)が表示されている.両表示とも消費者が正しく自分の希望する紫外線防御機能に合致した商品選択を可能にすることを目的としており、有用な指標となっている.紫外線防御剤には、大きく分けて紫外線を吸収する紫外線吸収剤と、吸収のほか紫外線を有効に反射、散乱させる紫外線散乱剤がある.最近ではこれらの紫外線防御剤が外部からの影響(水、汗など)により落ちてしまうことをできるだけ避けるために、皮膚上で耐水性の高い塗布膜をつくる工夫が施され、UVケア化粧品の皮膚への保持性が向上している.(→日焼け止め化粧品)
紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、紫外線を効率よく吸収することができる物質で、おもに有機化合物であり、有害な紫外線から皮膚の日焼けや化粧品の品質を守るために配合されている(表).紫外線吸収剤は、吸収した紫外線のエネルギーを熱などの害のないほかのエネルギーに変化させ、放出させることによって紫外線防御の機能を果たしている.求められる特性としては、①安全性が高く、化合物自体のみならず紫外線吸収後にも皮膚に障害を与えないこと、②高い紫外線吸収能をもっていること、③紫外線防御用化粧品に配合しやすいこと、④著しく使用感を損なわないこと、などがあげられる.現在、使用可能な有機系紫外線吸収剤を化学構造で分類してみると、パラアミノ安息香酸(PABA)誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、サリチル酸誘導体などに分けられるが、これらの中でも前述の必要条件をすべて満たすものは少ない.また、これらの有機系紫外線吸収剤は、紫外線の吸収波長範囲に選択性のあるものが多く、UVB(中波長紫外線)を吸収するもの、UVA(長波長紫外線)を吸収するものとに分けられる.UVB吸収剤として現在もっとも使用されているのは、ケイ皮酸誘導体のパラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルである.これは、UVB領域(312 nm付近)に高い吸収能をもった液状の紫外線吸収剤で、感触の改良に配合されているシリコーン油との相性がよいなど配合しやすいこともあり、国内に出回るUVケア化粧品のほとんどに配合されている.一方、UVA吸収剤はUVB吸収剤に比べて非常に数が少なく、実際に使用されているものは、ベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体およびヒダントイン誘導体にとどまる.その中でもっとも使用されているのはジベンゾイルメタン誘導体の4-t-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタンで、これはUVA領域(360 nm)付近に優れた吸収能をもっている.
紫外線散乱剤
紫外線散乱剤は、その表面において紫外線を物理的に散乱させることによって紫外線防御剤として機能している.紫外線吸収剤に比べ、散乱する波長に選択性が低く紫外線を一様に散乱することから、とくにUVAの防止剤として有効で、その重要性はますます高まっている.紫外線散乱剤には、ファンデーションや白粉(おしろい)などに用いられる白色顔料の酸化チタン*や酸化亜鉛(亜鉛華)などの超微粒子無機粉体が用いられている.これらの無機粉体は、紫外線を散乱させるだけでなく吸収することも知られており、化粧品において紫外線吸収剤としての役割も果たしている.従来、これらの無機粉体は、粒子径が0.5 μmと大きいために紫外線に対する散乱効果は十分ではなく、また皮膚に塗布した場合白くなってしまい、透明感、使用感といった点でも満足できるものではなかった.このことから、無機粉体は白色顔料として、おもにファンデーションや乳化タイプの化粧品に使用されており、紫外線散乱剤としてはその配合量は制限されて有機系紫外線吸収剤の補助的に配合されている傾向があった.それが近年、製造技術の進歩もあり超微粒子粉体の製造が可能となってきた.微粒子二酸化チタンや微粒子酸化亜鉛は、粒子径が0.02 μm程度と小さく、高い紫外線散乱効果を得ることができる.また、微粒子化することにより皮膚へ塗布したときの白さが目立たなくなり、乳液、クリームなどへの高配合も可能となった.有機系紫外線吸収剤を配合せずに紫外線防御機能をもつ、ノンケミカル紫外線防御用化粧品(有機系紫外線吸収剤を含まない製品)が敏感肌用として開発されている.(弓岡良輔)

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