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SPF [sun protection factor]

サンバーン(紫外線紅斑)をどの程度防止できるかという目安の数値.サンケア指数ともいう.サンバーンはUVB(→紫外線)により生じることから、SPFはUVBの紫外線防御能あるいは紫外線カット効果を表す数値ともいえる.1978年米国食品医薬品局(FDA)からSunscreen drug products for over-the counter human use. Establishment of a monograph;Notice of proposed rule makingが公表されたことにより、日本においてもUVB領域のUVケア化粧品の効果を示す指数としてSPFを表示した化粧品が数多く市販されるようになってきた.その後、日本化粧品工業連合会は“日本の市場で販売される化粧品に表示されるSPFは、相互に比較でき商品選択の基準となりうること、幅広い紫外線防御効果の測定が可能なこと、そして可能なかぎり国際的な測定法統一の流れに即していること”という基本的な考え方に基づいた日本化粧品工業連合会SPF測定法基準を作成し1992年に発効した.その後、高SPF表示されたUVケア化粧品が市販されるようになり、従来の測定法基準を高SPF-UVケア化粧品の測定に即した方法に改定すること、また国際的に米国、オーストラリアおよびニュージーランドでは表示SPFに上限が設けられていることから、1999年に日本化粧品工業連合会SPF測定法基準は改定され現在の測定法となっている.現在、表示SPFには上限が設けられており、その上限はSPF 50となっている.SPF測定結果が統計的に50以上であるUVケア化粧品についてはSPF 50+と表示されている.
SPF測定法
日本化粧品工業連合会のSPFの測定はヒトを用い、紫外線により引き起こされるサンバーンを指標としている.このことからスキンタイプⅠ〜ⅢがSPF測定に適している.年齢は18歳以上、体力的な観点から60歳までが望ましいとされている.試料(UVケア化粧品)の塗布量は2 mg/cm2と規定されている.紫外線の光源としてはキセノンアークソーラーシミュレーターをUVB(290〜320 nm)以下の短波長紫外線を除去して用いる.SPFの基本的な測定法はUVケア化粧品を塗布した皮膚と塗布していない皮膚、双方にソーラーシミュレーターを用いて一定時間照射し、翌日、サンバーンを起こしたかどうかを調べるという方法である.UVケア化粧品塗布時の紅斑を生じるMEDSPF=-----------------UVケア化粧品末塗布時の紅斑を生じるMEDここでのMED(minimal erythema dose:最小紅斑量)とはサンバーンを起こすのに必要な最小の紫外線照射量のことをいう.つまり、あるUVケア化粧品を塗布したときのMEDが塗布しないときのMEDの何倍にあたるかを示す数字がSPFとなる.このSPFという考え方は世界共通である.
MED(最小紅斑量)
紫外線による皮膚の炎症、紅斑は、一過性に皮膚が赤くなる現象のことをさすが、この紅斑を使った紫外線感受性を表す一つの指標.皮膚の紅斑反応は太陽光中では主としてUVBにより引き起こされ、照射数時間後から観察される.個人差や暴露紫外線量により違いはあるが、一般には24時間程度でピークとなり徐々に消失する.MEDは一般には照射1日後に肉眼で認めうる紅斑反応を起こすのに必要な最小紫外線照射量のこととする場合が多いが、日本化粧品工業会が規定するSPF測定法の中では、紫外線照射後16〜24時間に照射領域のほぼ全域(3分の2以上)にわずかな紅斑が生じる最小の紫外線量をいうと定義されている.通常、単位面積あたりのエネルギー量(mJ/cm2)で表される.太陽光中の紫外線で紅斑を生じる波長域は290〜320 nmであるので、人工紫外線を用いてMEDの絶対値を測定するためには紅斑に影響の大きい290 nm以下の紫外線をフィルターなどでカットすることが必要である.また、人工紫外線で求めたMEDと太陽光によるMEDのエネルギー比較は、生物学的な反応を考える点において厳密には意味をもたない.紅斑反応は紫外線に対して波長依存性があり、スペクトルの異なる紫外線では皮膚の反応性も異なるからである.紫外線測定機にも波長感度特性があるため、同じ紫外線照射機から発生した紫外線でも、異なる紫外線測定機で測定された場合は異なるエネルギー量となることもある.同じ紫外線照射装置で発生する紫外線をスペクトルを変化させることなく同じ紫外線測定機で測定したときのみ、そのエネルギー量で紅斑の程度を議論することができる.したがって人工紫外線によって得たMED(エネルギー量)をそのまま太陽光でのMED(エネルギー量)に外挿することは、誤った解釈につながるので気をつけねばならない.また、SPFを測定する場合は太陽光のスペクトルを考慮して人工太陽光(ソーラーシミュレーター光)が用いられるが、光源、照射条件などを一定にしないと正確なSPF値とはならないので注意する必要がある.SPF測定は皮膚の紫外線防御についての測定法であるが、口紅やリップクリームのSPF測定も、皮膚に使用する日焼け止め化粧品、ファンデーションなどと同様に皮膚上に塗布して測定される.唇は皮膚に比べてメラニン色素が少ないため、紫外線の影響を受けやすい部位と考えられている.そのため、各種紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合して、紫外線防止効果をもたせた口紅やリップクリームが増える傾向にある.しかしながら唇はその部位が小さいので、唇でSPFを測定することが難しい.
SPF値の解釈
SPFの測定は以上のように実験室内において一定の条件下で測定される.実験室内で測定されたUVケア化粧品のUVBの防止効果を示す尺度である.よって、実際の使用場面でのUVケア化粧品のUVB防止効果は、使用するヒトのスキンタイプ(紫外線に対する感受性)、塗布量、発汗の状態に左右される.よって、SPFはあくまで一定条件下で測定された紫外線防御化粧品のUVB防止効果がどの程度であるかを知るための目安である.(畑尾正人、正木仁、南孝司)

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