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神経系 [nervous system]

神経が神経としての本来の機能を発揮するためのシステム全体のこと.神経系は多数の神経細胞(ニューロン)はもちろんのこと、グリア細胞、支持組織、上皮組織、血管でなりたっている.細胞生体が生命体として活動をつづけるためには、生体を構成するさまざまな器官が協調的に働く必要があり、神経系は、内分泌系免疫系とともに生体の恒常性を維持し、各器官の働きをすばやく調節する役割を果たしている.神経系の主要な構成要素である神経細胞は、次のような特徴的機能をもっている.①神経の種類によって違いはあるものの、おおよそ秒速数十mの速さで電気的信号を伝える、②神経細胞の末端部分で神経伝達物質とよばれる化学物質を放出し、これが隣接した細胞に情報を伝達する.この神経終末と次の神経細胞、筋あるいは腺細胞との接合部をシナプスという.シナプスには、興奮性シナプスと抑制性シナプスがある.中枢神経系内では一つの神経細胞から多くの神経細胞にシナプスを形成して情報を発散させたり、逆に多数の神経細胞から一つの神経細胞にシナプスを形成して情報を収束させたりして、情報の統合が高度に行われている.シナプス伝達の特徴としては、①伝達される方向性があり、逆向きの伝達は起こらない、②シナプス間は神経伝達物質を介した情報伝達であり、電気的な神経の興奮伝達に比較して時間の遅れを生じる、③活用されるほどシナプス伝達の効率が高まる.これをシナプスの可塑性といい、学習や記憶形成に重要な役割を果たしている、④神経伝達物質はその特異的な受容体に作用し情報を受け渡すが、そうした受容体が各種存在するシナプスは種々の薬物の作用点となる、などがあげられる.なお、神経伝達物質には、アセチルコリンノルアドレナリンアドレナリン、ドーパミン、セロトニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、グルタミン酸、グリシン、ヒスタミン、オピオイドペプチド、サブスタンスP、CGRP(コレシストキニン遺伝子関連ペプチド)などがある.神経系は中枢神経系末梢神経系に大別できる.脳と脊髄をあわせて中枢神経系という.末梢神経系は脳から直接出る12対の脳神経と脊髄を入出する31対の脊髄神経をさす.中枢神経系は神経系の機能の中枢であり、末梢神経系は中枢神経系と身体各部の情報の連絡を受けもつ.末梢神経系は、体性神経系と自律神経系に分けられ、体性神経系は、さらに感覚神経系と運動神経系に分類される.自律神経系は内臓からの情報を統合し、内蔵機能を調節する.感覚神経系は皮膚や眼、耳などの感覚器にある受容器から受け取った外部環境の情報を中枢神経系に伝え、運動神経系は中枢神経系からの情報を骨格筋に伝えて運動を起こさせる.また、体性神経系と自律神経系は求心性神経と遠心性神経を含んでいる.求心性神経とは皮膚、筋肉、内臓などの感覚情報を中枢に伝える神経であり、遠心性神経は中枢からの情報を末梢に伝達し、各種器官の働きを調節する神経である.神経系の働きにはこのような感覚・認識、運動機能の調節、内蔵機能調節のほかに、高次神経機能がある.ヒトは大脳が著明に発達しており、大脳の統合機能である記憶、学習、認識、抽象化、言語、判断、思考、創造などが発達している.(土屋徹)

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