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角層保湿機能 [water holding function of stratum corneum]

角層の生理機能の一つで、角層がみずから水分を保持する働きのこと.角層水分量が保持されると角層の柔軟性が維持され、良好な肌状態を保つことができる.しかし、種々の要因によって角層水分量が低下すると乾燥肌となり、角層の柔軟性が低下し、スケーリングが生じやすく外観にも影響する.保湿メカニズム角層保湿機能の機序として、①皮脂膜の閉塞効果、②角層細胞間脂質のバリア機能、③天然保湿因子(NMF)による水分保持、をあげることができる(→総論6.10節).とりわけ、NMFの寄与が大きいが、角層細胞および角層細胞間脂質からなる角層の構築状態も角層保湿機能に重大な影響を及ぼす.いずれも健康な角層に備わる機能であるが、種々の要因によってNMFの産生が低下したり、または角層の構築状態が粗造になることで、角層保湿機能や柔軟性が低下するという悪循環に陥りやすくなる.機能の低下角層保湿機能の低下は、種々の角化症、乾皮症、加齢した皮膚、ある種の皮膚炎などで観察される.大別して、表皮ターンオーバーが速い場合と遅い場合が想定される.表皮ターンオーバーが速い場合としては、乾癬などの炎症性皮膚疾患があげられる.表皮増殖は盛んで不全角化(→角化)が認められ、角層はスケーリングを生じ、角層水分量はきわめて低く、NMFの含量も低い.一方、表皮ターンオーバーが遅い場合の症状としては、老人性乾皮症があげられる.表皮増殖は沈滞し角層に停留する角層細胞の時間が長く、角層肥厚し、バリア機能としては損なわれていないものの角層水分量は低く、NMFの含量も低い.両者に共通して、NMF、とくに角層中のアミノ酸含量の低下が認められることは、保湿機能におけるその役割が普遍的であることを示している.(平尾哲二)

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