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過酸化脂質 [lipid peroxide]

不飽和結合をもつ脂質が酸素と反応して生成したものをいう.体内では、発生した活性酸素(→フリーラジカル)が体内不飽和脂質を酸化することにより生成される.酸化反応とは物質と酸素分子が結合することで、金属がさびるという現象も金属と酸素が結合することによって起こる酸化反応の一つ.人間など生物を構成する基本単位は細胞であり、すべての細胞は脂質で構成された細胞膜に覆われている.この細胞膜脂質には多くの不飽和脂肪酸が含まれていて、活性酸素はこの不飽和脂肪酸を酸化して、過酸化脂質に変化させてしまう.細胞膜に過酸化脂質が増えてくると正常な機能を発揮しなくなり、人体にさまざまな害が現れてくる.このような過酸化反応は生体内のみで起こるわけではなく、私たちの周囲でも一般的に起こっている反応である.サラダ油を何度も加熱使用すると褐色に色変化が起きてくるのも、サラダ油内の不飽和結合が酸素と反応して酸化したためである.過酸化反応は、不飽和結合をもつ脂質が酸素と結合することにより進行する反応で、紫外線や熱がこの反応を加速させる.皮膚表面では、皮脂スクワレンの、あるいは角層細胞間脂質由来のコレステロールが、紫外線によって過酸化され過酸化脂質となる.過酸化スクワレン(スクワレンヒドロペロキシド)がにきび(アクネ)やサンバーンの原因となるともいわれている.また、実験的に過酸化スクワレンをマウスに塗布するとヒトの肌荒れと同じような状態や細かなしわの発生を引き起こすことがわかり、さらに、皮膚の免疫機能を低下させてしまうこともわかっている.そのほか、過酸化脂質が脳細胞に蓄積されると、記憶力と思考力が衰え、しだいにひどくなるとぼけとなる.また、眼の水晶体のタンパク質が過酸化脂質によって酸化反応が進行すると、水晶体が濁るいわゆる白内障となる.このように過酸化脂質は、生体にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかってきた.(→フリーラジカル)(正木仁)

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