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肌荒れ [skin roughness]

皮膚の表面形態が乱れている肌状態の総称.健康な皮膚の表面では、皮溝皮丘によって規定されるきめ(肌理)が形成され、光学的にも規則的である.しかし、肌荒れした皮膚の表面では、きめが乱れて、さらには鱗屑(→スケーリング)が発生し光学的に不規則になり、肉眼でもその乱れを認知できるようになる.また、肌触りもスムースさに欠け、かさついた感触になる.
発生機構
一般には、皮膚にさまざまな刺激が加えられたときに、肌荒れが発生する.たとえば、皮膚刺激性を有する化学物質(刺激物質感作物質など)に触れたり、強い陽射し(紫外線)を浴びたりすると、その数時間から数日後に肌荒れが発生する.肌荒れは皮膚表面の変化としてとらえることができるが、じつは刺激が加えられた皮膚の中ではさまざまな炎症反応が生じており、ケラチノサイト(表皮角化細胞)の異常な増殖反応も起こる.その結果、健康であれば十分な角化が進行するところが、十分な角化が進行しないまま角層表層に押し上げられ、鱗屑(りんせつ)を形成する.肌荒れが冬季に発生しやすいことから想像できるように、乾燥に伴う角層水分量の低下が肌荒れの発生を助長していると考えられる.
化粧品による肌荒れの予防・改善
肌荒れの予防・改善において、スキンケア化粧品の果たす役割は大きい.すなわち、スキンケアによって皮膚にうるおいを与え、角層保湿機能を高め、角層水分量の高い状態が維持されるというわけである.これによって、皮膚の柔軟性を高め、スムーズな角層剥離を促すことができ、肌荒れが予防・改善される.また、肌荒れの発生要因に着目して、さまざまな薬剤により肌荒れを抑制することも可能になりつつある.たとえば、肌荒れに伴って生じている表皮の微弱な炎症反応に関与するプラスミノーゲン活性化を抑制する薬剤や、角層細胞間脂質の産生・分泌を促すことによって角層バリア機能を高め、表皮の異常な増殖反応を制御する薬剤が有効であるとされる.あるいは、角層の剥離機構に着目して、デスモソームの分化を促して最外層の角層の接着力を低下させ、スケーリングを防止する薬剤も開発されている.(→肌荒れ防止剤)
評価
肌荒れの評価は、その特徴を反映してさまざまな指標で行うことができる.肉眼的にはスケーリングの程度、炎症反応による紅斑の程度をスコア化する.これらはいずれも機器による計測が可能で、表面形態をデジタルマイクロスコープで撮影して、画像解析によりスケーリング部分のみ抽出して評価をする、あるいは皮膚の測色により赤みの程度を定量化することもできる.また、肌荒れに伴う表面形態の変化は、レプリカ法などによって計測することもできる.さらに、肌荒れに伴う角層水分量の低下やバリア機能の低下は、角層コンダクタンスや経表皮水分蒸散量の測定など、皮膚を傷つけないで測定する機器を用いた非侵襲的な方法により評価することができる.(平尾哲二)

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