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にきび [acne vulgaris]

脂腺性毛包に生じる炎症性の皮膚疾患.医学的には尋常性痤瘡をさし、痤瘡、アクネともよばれる.思春期に多く発生して成長とともに自然に治る場合が多い.発生に関係する主要な因子としては、内分泌因子(ホルモン)、毛包管の角化、毛包管内の細菌、遺伝的要因などがある.皮膚にある毛包は、軟毛性毛包、脂腺性毛包および終毛性毛包の3種類に分類される.これらのうち脂腺性毛包は顔面がもっとも密度が高く、胸、背の中央部がこれに次いでいる.したがって、にきびは顔、胸、背に発生しやすいとされている.これらのにきび発症部位には面皰*(めんぽう)、丘疹、膿疱などの皮疹が混在して見られる.
原因
面皰の形成はにきび発生に重要であるが、その主要因として毛包管の異常角化、皮脂分泌の亢進、皮脂成分の変化、毛包管の細菌叢があげられる.毛包管の異常角化については不明な点はあるが、性ホルモン、皮脂成分(遊離脂肪酸など)による化学的な刺激、毛髪や手指による機械的な刺激などが考えられている.皮脂分泌の亢進にはホルモンが深くかかわっており、ことに皮脂腺の増殖と皮脂分泌を増加させる作用をもつ男性ホルモンが大きな影響をもっている.皮脂成分のうち中性脂肪であるトリグリセリドは、皮膚常在菌通性嫌気性桿菌の一種であるアクネ菌(Propionibacterium acnes)の産生するリパーゼによって分解される.その結果、発生した脂肪酸のうちある種の脂肪酸(パルミチン酸、オレイン酸など)は、毛包角化作用や起炎作用をもつといわれている.皮脂量の増加とともにアクネ菌は、自身の栄養とするためリパーゼでトリグリセリドを分解しつつ増殖し、さらに炎症の発生にかかわる成分も分泌する.これが、にきびの発生から悪化していく経過である.
症状
面皰の中には角層片、皮脂、軟毛が充満しており、アクネ菌の増加もある.面皰は内容物の貯留がしだいに増え大きくなると、トリグリセリドの分解産物である遊離脂肪酸や、面皰中で増殖した細菌の産生する酵素などが毛包管壁に対して起炎作用を示す.このようにして炎症を起こしたものが赤色丘疹の始まりである.炎症がさらに進むと細菌の増殖による化膿性炎症が加わって膿疱といわれる状態になる.また、炎症が皮膚の深部にまで広がり、皮膚組織の傷害が大きくなると、毛包、脂腺とも炎症により破壊され嚢腫となる.その後の組織修復過程で痘痕(あばた)が形成され、炎症が治ったあとも痘痕や色素沈着として痕(あと)が残ってしまう場合がある.
予防とケア
にきびのできやすい思春期は精神的にも不安定な時期でもあり、にきびといえども深刻な悩みとなることが多い.にきびに対する適切なケアは、肌ばかりでなく精神的にもメリットをもたらすことになる.にきびの予防とケアには、生活上の配慮と肌のケアが重要となる.
(1)日常生活における注意
生活リズムの乱れや、心身のストレスがにきびの発生に悪影響することは周知である.睡眠や食事を規則正しくとることが大切で、食事では油分、糖分の過剰摂取は避けたほうがよい.また、にきびのできやすい部位へ毛髪が触れないようにすることや、頬づえなどにきびに手指が触れる姿勢にも気をつける.にきびは美容上大きな悩みである場合が多く、早く治したいと気にするあまり、面皰や丘疹をつぶそうとしがちだが、それは避けるべきである.また、過度の日焼けも避けたほうがよい.
(2)にきびのケアのための化粧品
化粧品による予防とケアも重要である.洗浄剤を用いて肌の汚れや過剰な皮脂を取り除くことは必要である.しかし、にきびや皮脂を気にするあまり、過剰に洗浄するのはかえって肌の乾燥や肌荒れによる毛穴の角化異常の原因になる.したがって、刺激の少ない洗浄剤を選び、朝晩や汗をかいた後に使用して肌を清潔にし、洗浄剤が残らないように十分すすぐことが大切である.にきび肌用化粧品としては、洗浄剤をはじめ化粧水、パック、スポッツ使用のコンシーラーなどがある.そうしたにきび肌用の化粧品には、面皰を誘発しない、肌への刺激が少ない原料を用いるなどの配慮がなされるとともに、にきびの発生過程への対応として、肌の乾燥しすぎや荒れを防ぐ成分、殺菌成分、緩和な消炎成分などが配合されている.しかし、化粧品は、あくまで予防や軽度のものへの応急処置として考えるべきであり、状態がひどい場合などは皮膚科医へ相談し、指導を受けることが必要である.(北村 謙始)

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