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色素沈着 [pigmentation]
色素沈着には母斑やそばかすのような先天的なものと肝斑、老人性色素斑や紫外線や炎症による後天的なものがある.色素沈着部位ではメラノサイトの増加とメラニン産生能の上昇が確認されている.紫外線による色素沈着は、炎症後に起こり、このような紫外線による色素沈着を皮膚の黒化反応ともよぶ(→サンタン).こうした黒化反応はUVBや炎症による刺激によりケラチノサイト(表皮角化細胞)あるいはメラノサイトのサイトカイン(エンドセリン-1など)やホルモン(メラノサイト刺激ホルモン)あるいは炎症系のケミカルメディエーター(プロスタグランジン、ロイコトリエン)の産生、分泌の亢進により引き起こされる.これらの物質がメラノサイトに作用しメラノサイトの増殖やメラノサイトに存在するメラニン産生に重要な役割を果たすチロシナーゼ酵素の遺伝子発現レベルや活性を高める.その結果、メラニン色素の過剰産生が起こり、皮膚表面から見ると皮膚が黒くなる、つまり、黒化として認識されるわけである.メラノサイトで産生されたメラニン色素は周囲のケラチノサイトへ移送され、ケラチノサイトの角化に伴い皮膚外に排泄されていく.近年、メラニン色素の周囲のケラチノサイトへの移送を抑制することによって黒化反応がおさえられることから、メラニン色素の周囲のケラチノサイトへの移送が皮膚の黒化に重要な役割を果たしていることも明らかになっている.最近、老人性色素斑の形成にエンドセリン-1が肝斑の形成にはメラノサイト刺激ホルモンが関係していることも報告されている.(正木仁)