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化粧水 [lotion]

肌を清潔にし、健やかに保つために使われる、一般に透明液状の化粧品.洗浄作用と同時に皮膚のモイスチャーバランスを保ち、肌を整える効果をもつ.とくに水分と保湿剤を補給する効果に優れる.透明液状のもののほかに、白く半透明な外観の化粧水や、白く濁ったもの、粉末が入ったものなどがある.目的・機能一般に、皮膚を清浄にし、うるおいを補給することで皮膚を健やかに保つことを目的とするが、そのほかに、肌を引き締める収れん作用を目的にしたものもある.使用目的により大きく次の三つに分類される.
(1)柔軟化粧水
角層に水分・保湿成分を補給し、みずみずしく、なめらかなうるおいのある肌を保つ.
(2)収れん化粧水
肌を一時的に引き締める収れん作用と過剰な皮脂をおさえる作用をもつ.さっぱりした使用感で、化粧くずれを防ぐ.
(3)洗浄化粧水
ライトメーク(あっさりしたメーク)落としとして、また素肌の汚れ落としとして使用される.洗浄効果を高めるため、界面活性剤、保湿剤、アルコールを一般の化粧水より多く配合している.
主成分
基本成分は水であるが、使用目的や用途、また心地よい使用感触や美しい外観を追求して、精製水、アルコール類、保湿剤、柔軟剤、可溶化剤、緩衝剤、増粘剤(粘液質)、香料、防腐剤、色材、褪色防止剤、薬剤などが配合される.以下に化粧水に配合される主成分について述べる.
(1)水性成分
精製水、エタノール、保湿剤、水溶性高分子など.化粧水に配合されるアルコールは、化粧水の特徴であるさっぱり感や清涼感などの使用感触に大きな影響を及ぼす.また、製品の防腐性を向上させたり、香料や可溶化剤を溶けやすくする働きもあるが、多すぎると刺激を感じる人もいるため注意が必要である.保湿剤はグリセリンやジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコールポリエチレングリコール類などの多価アルコール類、ソルビトールやマルチトールなどの糖類、などであり、その製品に求められる保湿効果や使用感によって量や組成が決められる.水溶性高分子は、カルボキシビニルポリマーキサンタンガム、セルロース誘導体などであり、こくやとろみといった独特の使用感を出すために重要である.また、ヒアルロン酸は高い保湿効果をもち、まろやかでこくのある使用感があるため大切な成分である.
(2)油性成分
化粧水に配合する油性成分はほとんどが香料やビタミンなどの薬剤である.エモリエント効果を与え、べたつきをおさえるためにミクロエマルション系にする場合は、少量の流動性油分を配合する.流動性の油分として使われるものは、エステル油や植物油系のオリーブ油、ホホバ油マカデミアナッツ油、ひまわり油などである.
(3)可溶化剤(界面活性剤)
おもな役割は可溶化と洗浄であり、安全性面から非イオン性界面活性剤がおもに使われる.HLB値12〜15程度の非イオン性界面活性剤が汎用され、具体的にはPOEアルキルエーテル、POE・POPアルキルエーテル、POE硬化ひまし油などである.界面活性剤の配合量を増やすと使用感でべたつきが出てしまうため、不必要に増やすことは好ましくない.
(4)その他
カルボキシビニルポリマーの中和に用いられるアルカリ剤(トリエタノールアミン、カセイカリなど)、製品の安定性を保つためのキレート剤(エデト酸塩など)や緩衝剤(クエン酸/クエン酸ナトリウムなど)、防腐剤(パラベン、フェノキシエタノールなど)、酸化防止剤(ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエンなど)、色材(許可色素)、香料などがある.
処方別分類
大きく次の五つに分類される.
(1)透明溶解系
水に難容な成分が含まれず、すべて水溶性成分で構成されている単純な溶解系
.(2)可溶化系
界面活性剤を用い、香料などの水に溶けにくい成分を透明に溶解させた系.化粧水の中ではもっともポピュラーなもの.
(3)ミクロエマルション系
水中油(o/w)型乳化でありつつ、乳化粒子系を高圧乳化機のような高せん断力をもつ乳化機で微細にして半透明にした系と、可溶化系で半透明な系とがある.
(4)o/w乳化系
白色の不透明化粧水で、数%の油分を乳化し、水相と油相の比重をほぼ同一にすることで、液状でありながらクリーミングや沈降が起こらない.厳密にはこのタイプは乳液であるが粘度がないため化粧水に分類することもある.
(5)多層型
カーマインローションに代表されるような粉末が沈降した2層タイプと、上層が液体油性成分、下層が水溶性成分の2層で、使用時浸透すると乳化するタイプの二つが代表的である.製造法一般的な可溶化系化粧水の製造法は、精製水、緩衝剤、キレート剤、保湿剤などの水相成分と、香料、可溶化剤(界面活性剤)、防腐剤などを含むアルコール相成分を常温下で均一に可溶化混合し、濾過するというものである.化粧水は、乳液やクリームとは違って加熱工程がないため、とくに微生物による汚染に留意する必要がある.濾過素材としては、濾紙、カートリッジ、素焼濾筒などが用いられる.なお、アルコールを含まないノンアルコール化粧水では、アルコールの代わりにジプロピレングリコールなどの保湿剤を使う.ただし、保湿剤の種類でつくりやすさが異なるため最適な保湿剤を選ぶことが大切である.(→総論18章)(徳江渡)

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