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サンタン [suntan]

一般に、太陽光を浴びた後に起きる皮膚の黒化現象全般をさす.黒化、タンニングともいう.原因波長は主として紫外線であるが、可視光線も一部関与していると考えられる.皮膚の黒化はUVAおよび可視光線による即時黒化(一次黒化:IPD)、持続型即時黒化(PPD)とUVBあるいはUVAの大量照射による遅延型黒化(二次黒化:DT)に分類されている.
(1)即時黒化(一次黒化)[immediate pig-ment darkening]
IPDはUVA照射中あるいは照射直後に見られるくすんだ灰褐色の色素増強であり、弱いながらも可視光でも観察される.IPDは照射中止の5〜10分後には消退しはじめ、一般には数時間で消失するが、IPDを生じる閾値(いきち)量の数倍のUVAを照射すると24時間後でも消えることはない持続型即時黒化が観察され、そのまま数週間継続することもある.なお、IPDはサンバーンの炎症後に見られるDTとは異なりメラニンの新生によるものではなく、既存の還元型メラニンが光酸化されてより濃い色のメラニンに変わることにより起こるものと考えられ、皮膚色の濃いヒトのほうが容易に起こる.IPDの生体における意義はいまだ不明の部分が多い.
(2)持続型即時黒化[persistent pigment darkening]
PPDはIPD消退後に観察されるようになる茶褐色の皮膚黒化で、IPDのような可逆的な色変化とは異なる非可逆的な色素沈着であり、表皮のターンオーバーとともに消失していくと考えられる.PPDも個人による反応性の差が大きく、人によってはほとんど観察されないような場合もある.近年、一部のメラニン中間体がUVAにより非酵素的に重合することが報告され、これがPPDの原因となっていることが提唱されている.
(3)遅延型黒化(二次黒化)[delayed tan-ning]
DTは日焼けとよばれるもっとも一般的に捕らえられている黒化現象で、紫外線照射によるサンバーンの炎症が消退する3〜10日目でピークとなり、照射紫外線量、人によっては数カ月間から数年間持続する場合もある.照射の7日後に肉眼で認められる最小の色素沈着を引き起こすのに必要な照射量を最小黒化量(MTD)とすることが多い.DTのメカニズムは紫外線照射によりメラノサイトチロシナーゼ活性が高くなり、成熟したメラノソームの数が増加し、個々のメラノサイトが大きく発達した樹枝状突起を示すようになると、メラノサイトから周囲のケラチノサイトへのメラニン供給が増加するためにケラチノサイト、有棘細胞内のメラノソームの数が増加し、皮膚が黒く見えるようになる.ケラチノサイトに供給されたメラノソームは細胞核が帽子をかぶったような状態に分布する(メラニンキャップ)ことで、紫外線のエネルギーをメラニンが吸収し、核DNAを紫外線傷害から防いでいると考えられる.紫外線1回照射ではメラノサイトの数は増加せずに形は大きくなり、機能が亢進するが、反復照射ではメラノサイトの大きさと機能の亢進のほかにドーパ陽性メラノサイトの数も増加するという報告や、UVによる損傷DNAあるいはその修復による産物などがメラニン形成を増幅するという報告もある.DTは紫外線の暴露量によってその色素沈着が数カ月以上もつづく場合があるため、皮膚に対する影響はかなり大きいが、基本的には可逆的な色素沈着でありもとの皮膚色に戻る.これに対して、しみそばかすは表皮メラノサイトのメラニン産生が亢進している点では同じだが、なんらかの理由で特定部位のメラニン産生が亢進しつづけ非可逆的な色素沈着を起こしている点で異なっている.(畑尾正人)

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